【例文】
In the event of any default or breach of any provisions hereof by either of the parties hereto, if such default or breach is not cured within thirty(30) days after the non-defaulting party’s written notice thereof, the non-defaulting party shall have the right to terminate this Agreement by giving written notice of termination.
【訳例】
本契約の一方当事者による、本契約のいずれかの規定の不履行または違反が発生し、非不履行側当事者によってかかる不履行または違反についての通知がなされた後30日以内に、かかる不履行または違反が是正されない場合、非不履行側当事者は、解除の通知書を付与することにより、本契約を解除する権利を有するものとする。 |
まず、冒頭のIn the event of any default or breach……は、原文の英語では句ですが、日本語訳では節として訳しています。
「本契約の当事者のいずれかの不履行及び違反の場合」とするよりは、訳例のようにしたほうが、出来上がりの日本語はやや長くなりますが、文章として意味がスッと頭に入りやすいはずです。
その他にも、non-defaulting party’s…… のところも、「非不履行側当事者の」とせずに「非不履行側当事者によって」とすることで、意味を明確化し、分かりやすくしています。
さて、皆さんの解答も、これに近い感じになったでしょうか。
では、読みやすくする作戦の続きです。
◆if any、if possible, as applicable、as the case maybe などの処理の仕方
法律文書には、上記のような句が挿入されることがよくあります。短いし、訳してもたいした意味にはなりそうにないのですが、何事もキッチリと表現しておくことが正しい法律文書ですから、「あってもなくてもいい」飾りではないのです。
if any は、「それが存在するかどうかは明確ではないが、もしもあるとしたら」という意味です。たった2語なのに。
同様に、if possible は、「それが可能かどうかはここで問題にはしないが、可能であるならば」という意味です。
こう書いておかないと、if any の場合ならこれを挿入した条文があることによって、存在することを暗に示した、黙示した、と相手方に主張されてしまうかもしれませんし、if possible も同じで、「それが可能だという前提で話をしている」と言われてしまう恐れが有ります。
【例文1】
Licensor’s aggregate liability and that of its affiliates and suppliers under or in connection with this agreement shall be limited to the amount paid for the Software, if any.
【訳例】
本契約に基づく、またはこれに関連する、ライセンサーの総債務額および、ライセンサーの関連会社およびサプライヤーの総債務額は、本件ソフトウェアのために支払われた金額があるとしたら、その金額に制限されるものとする。
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例文のif any は、if there is any amount paid for the Software の略です。
if any の部分の訳としてよく見られるのは、
本件ソフトウェアのために支払われた金額(もしあれば)に制限されるものとする。
これでももちろん間違いではないですし、充分意味は分かります。でもこの訳文を読むと、(もしあれば)の部分でちょっとつまずいちゃうような感覚がないでしょうか。
ここはやはり、上手く訳文のなかにif anyの意味をを盛り込んで、多少語句を補って自然な文章にした方がいいでしょう。,/p>
【例文2】
If the second Party fails to appoint an arbitrator or the two arbitrators fail to agree on the selection of a third arbitrator, the second or the third arbitrator, as the case may be, shall be selected by the President of the Administrative Tribunal of the International Labour Organization, established in Geneva, Switzerland.
【訳例】
第2当事者が仲裁人の指名を怠った、または2人の仲裁人が3人目の仲裁人の選定において合意し得ない場合、2人目の、または場合に応じて3人目の仲裁人は、スイスのジュネーブに設立された国際労働機関の仲裁裁判所の裁判所長によって選任されるものとする。
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if any やas the case maybe のような挿入語句を訳す時に注意したいのは、挿入する場所と表現です。
例文2でも、
2人目の、または3人目の仲裁人は、場合に応じて、
では、文章の流れが悪く、意味もやや分かりにくいですね。
◆言葉を補って訳す
上の例文1の説明のところで「語句を補って」と述べましたが、これも重要なテクニックです。
例文1の1行目、that of its affiliates and suppliers を、もしも「その関連会社およびサプライヤーのそれ」と訳してしまったら、意味が分かりにくくなりますね。
that は、aggregate liabilities を指しており、its は Licensor を指しています。
同様に、冒頭で解説した宿題文でも、non-defaulting party’s written notice thereof の thereof を、「それらの」とせずに、「それら」の中身を言い直して訳しています。
何度も同じ言葉を繰り返して並べてくどくなるのも禁物ですが、「それ」とか「これ」では意味が不明瞭になると感じたら、適宜、言葉を補っていきましょう。
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