【例文】
‘Contract Month’ means, in respect of any Order Form relating to the provision of Services for a specified period of months, the calendar month commencing on the start date specified in the Order Form and ending on the day before the same date in the next calendar month. For example, the calendar month commencing on 24 February and ending 23 March.
【訳例】
「契約月」とは、規定の月間の本件サービスの提供に関連する本件注文書に関して、本件注文書に明記される開始日に開始して翌暦月の同じ日付の前日に終了する暦月をいう。たとえば、2月24日に開始して3月23日に終了する暦月などである。
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この例文は、「calendar month」が必ずしも月の1日に始まるものではない場合もあるということを示すために取り上げました。Google で[calendar month commencing]と打ち込んで検索すると、同じ条文があちこちのサイトで使用されています。標準契約書なのでしょう。
では、今回のテーマです。
◆ 期間の始まりと終わりを示す表現
上の宿題で …commencing on ~ and ending on ~ という表現が用いられていますね。このように、ある期間の始まる日と終わる日を明記して特定の期間を示す表現は他にもあります。
例)The revised price list shall be effective from May 15 to June 13.
このような条文があったら、少し注意してください。
単純に「5月15日から6月13日まで」と訳していいかどうか、実は明確ではないのです。
日本語で「~から」「~まで」と期間の始まりや終わりを表す場合、通常はその日付を含むものとして考えます。たとえば、「2学期は9月1日から始まります」と言います。9月1日を初日とするために、「8月31日から始まります」とは言いません。「ねぶた祭は8月7日までです」というと、7日が最終日ということです。
一方、法律用語としては、日本の民法138条から143条までに期間についての規定があり、期間の始まりを時間で表すときはその時点から起算する(139条)、日・週・月・年で表すときは、その初日を算入しないが、その日の午前零時と定めている場合に限ってその日を含む(140条)など、きちんと決まっています。
ところが英語では、期間の始まりを表す from と終わりを表す to については、その日付を除外すると考えるのが一般的といわれており、そのような判例もあるのですが(Goldsmith’s Company v West Metropolitan Rail (1904) )、実際にはその日を含む意味で使用されている場合も多いのです。たとえば、from January 1 to December 31 と書かれていれば、「1月2日から12月30日」と解釈するより「1月1日から12月31日」と考えるのが自然です。もちろん、前者の意味である可能性がゼロというわけではないのですが。
こういう混乱や誤解を避けるために、良い条文は次のような表現を用いています。
【例文】
The revised price list shall be effective from May 15 to June 13 (both dates exclusive).
【訳例】
改定された価格表は、5月15日から6月13日まで(いずれの日も除く)有効であるものとする。
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実際には5月16日から6月12日までの4週間の期間を表すので、そのように訳してもいいのですが、その場合 both dates exclusive の部分を訳出できないので、その旨を訳注などで申し送りをしたほうがいいでしょう。
逆に、その日付を含めた期間にしたい場合は、exclusive の代わりに inclusive を挿入しています。訳はそれに応じて「いずれの日も含む」などになります。
「~から……まで」の期間を、 the period commencing with/on May 1 and ending with/on May 31 と表現している場合は、両方の日付が含まれます。
◆ ~までに
「~までに……を行うものとする」のような表現の場合、from や to の時と同じように注意しなくてはならないのは、その日付を含むのか含まないのか、ということです。
では、次のような条文の場合はどう解釈すればいいでしょう。
【例文】
1) The Report shall be submitted by July 30, 2007.
2) The Report shall be submitted before July 30, 2007.
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by は、not later than の意味だと多くの英英辞書に出ています。本来は、ある時刻を期限に、たとえば by 2 p.m. (=not later than 2 p.m. =2時までに)のように用います。この場合、午後2時0分までは OK という意味になります。
期限が時刻よりも幅のある日や月のときはどうでしょうか。
上記の例文1)の場合、7月30日は含まれるのか含まれないのか。
not later than July 30 と考えると、7月30日は含まれることになります。
では before はどうでしょうか。
たとえばオンラインの英英辞書
Merriam-Webster
(http://www.m-w.com/) では earlier than の意味だと書かれています。
ということは、before July 30 は、7月30日は含まれないことになります。
日本語の「~までに」はどうでしょうか。
毎年1月ごろになると「確定申告は3月15日までにお済ませください」と書かれているのをあちこちで見ます。この場合、3月15日は含まれています。
食品の賞味期限も「4月30日までにお召し上がりください」などと書かれていれば、4月30日に食べても大丈夫ということになります。
したがって、「~までに」は通常、その日が含まれます。
以上の考察から、上記の例文のそれぞれの訳は、以下のようになります。
【訳例】
1) 本件報告書は、2007年7月30日までに提出されるものとする。
2) 本件報告書は、2007年7月29日までに提出されるものとする。
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2)の訳で、日付を1日早めたもので言い表すのがなんとなく嫌な場合は、「7月30日より前に」と直訳っぽくしても構わないかもしれません。
本来は、法律文書は誤解が生じる可能性のないものが良い文章であり、from、to や、by、before を用いるよりも、くどくても間違い難い表現を用いるべきなので、「~までに」という表現でも、以下のように表現した方が良いはずなのです。
【例文】
The Report shall be submitted on or before July 30, 2007.
【訳例】
本件報告書は、2007年7月30日を含めその日までに提出されるものとする。
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したがって、by や before 単独で表現している条文の場合は、納品時に一応、「その日付が含まれる/含まれない可能性があります」といった申し送りをしたほうがよいでしょう。
◆ after
【例文】
If contract is received after April 22, 2005 and subsequently cancelled, there will not be a refund on any fees.
【訳例】
契約書が2005年4月22日より後に受領され、その後取り消された場合、手数料は一切返還されません。
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after の後に特定の日付がある場合、その日付が含まれない、それより後の時間を指します。
上の例文で言うと、契約書の締め切りが4月22日まで(その日を含む)で、23日以降に受領されたものについての規定なのです。
ところが、
【例文】
After the Effective Date, this Agreement shall become effective for each state that ratifies or adheres to it.
【訳例】
本件発効日以後、本合意を批准する又はこれに従う各州において、本合意は有効であるものとするものとする。
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このように、after の後に特定の日付ではなく effective date や date of invoice などの表現がある場合は、その日が含まれるという可能性もあります。その場合、「~の後」と訳すとその日が含まれないという解釈にもなるので、「~以後」とした方が良いでしょう。
もちろん、明確に on and after となっていれば、「~以後」です。
では、宿題です。
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