Tradosとぼくと文節結合
Tradosで作業をしていると、おや?と思ってしまうことは数多くあると思います。今回はそのような不可思議な状況の一つ、文節の句切れについてお話したいと思います。
原文では明らかに一つの文章のはずなのに文節が区切られて表示されているという経験はないでしょうか。例えば、以下のように。
文節番号35:Tradosとぼくと東京タワー(2020.
文節番号36:03.10~)
本来であれば「Tradosとぼくと東京タワー(2020.03.10~)」を一文として表示して欲しいのですよね。ただ、今回の例のように改行やコロン、ピリオドなどを文の句切れと判断してTradosは勝手に文節を切り離してしまいます。軽微なものであれば翻訳メモリの「文節規則」機能を使うことで調整することができます。ただ、設定方法もややこしく、資料の内容によっても細かな微調整が必要となり、初めてTradosを使う人にとってはかなり難解な内容となっています。(「文節規則」の詳細についてはSDLの公式ブログで紹介されていますので、こちらをご参照ください。)
一方で、Tradosのエディタ画面にはいかにも魅力的な機能があります。それが「文節の結合」です。「文節の結合」を使うには結合したい二つのセグメントを選択し、「文節結合」ボタンをクリックするだけ。ただこれだけの操作で2つに分かれていた文節が1つの文節にまとまります。ただ、簡単な操作の裏にはやはり悪魔が潜んでいます。安易に「文節の結合」を連発してしまうと、Trados-原文ファイル間のレイアウト情報において整合性がとれなくなる場合があります。結果として、訳文生成時にエラーが発生し、Trados上では訳文が完成したのに納品できないという涙ぐましい状況になることも。
さらに、Tradosで一度「文節の結合」を実行してしまうと元の文節には戻せないという欠点もあります。「結合」とは逆の機能、「文節の分割」を使用すれば、見た目上は元の文節となるのですが、Tradosの内部処理としては「文節の結合」→「文節の分割」を2段階で処理したこととしてとらえられるので、結局「文節の結合」をなかったことにすることはできません。予防策としては以下の2つが考えられます。1つ目は、「文節の結合」を実行するたびに訳文生成を試してみることです。2つ目は、「文節の結合」を実行する際には事前のバックアップを取っておくことです。エラーが発生した際には常にエラー発生前の状況に立ち戻れるように準備しておくことが望ましいと言えるでしょう。ただ、どちらも面倒な作業なので、なるべく文節の結合は控えめにしておきたいですね。
一概に「文節の結合」が悪いと言い切ることはできませんが、もし文節の結合を使う機会がありましたら、上記の注意点を頭の片隅にでも置いてみてくださいませ。