Tradosとぼくとバイリンガルレビューファイル
みなさんはTradosのバイリンガルレビューファイル機能を使用したことがありますでしょうか。翻訳者さんだとあまり使用したことのない機能かもしれませんが、コーディネーターの方やチェッカーさんは何度か使用したことがあるのではないでしょうか。バイリンガルレビューファイル機能は、Wordファイル上でTradosの訳文をレビューできる便利な機能です。Tradosのエディタ画面に表示されるようなセグメントごとに切り分けられた対訳形式でWordファイルに出力されます。Tradosを持っていないチェッカーさんやクライアントに確認する際に使用する機会が多いですかね。ただ、翻訳メモリや用語ベースも使用できないため、過去訳の確認や用語統一にはいつも以上に注意する必要があります。また、Tradosの訳文を無理やりWordファイルに書き出しているため、想定されていない操作をするとすぐにインポートエラーを引き起こしてしまう機能でもあります。バイリンガルレビューファイル機能使用時の注意点についてはSDLの公式ブログにも掲載されていますので、こちらをご確認くださいませ。
これって正しい使い方?
さて、通常の使用方法は上記の通りですが、バイリンガルレビューファイルはより一層の可能性を秘めているような気がします。今回は個人的に便利だなと思う使用方法を紹介していきますが、通常の作業では想定されていない操作ということは事前にご理解くださいませ。
・対訳表の作成
バイリンガルレビューファイルでWord版を生成することで、簡単にセグメント区切りのファイルを入手することができます。例えば、既存の対訳文章を翻訳メモリ化しようとした際にはバイリンガルレビューファイルから原文だけでも作成することで原文のコピペ時間を削減することができます。
・原稿差し替えファイルの差し替え個所確認
翻訳中に原稿の差し替えは嫌ですよね。今まで翻訳した文章が無駄になってしまいますし、微調整程度であればどこが変更されているのか旧版と新版を見比べるのも目が痛くなってしまいます。WordやTradosを使用していれば、比較機能やTMを使用して容易に変更個所を確認することができます。ただ、その他のファイル形式、例えばPowerPointなどをファイル上書きで翻訳していた時は、変更個所を確認するだけでも一苦労です。コーディネーターとしてもお見積りを作成するために変更個所の分量を確認するために変更個所を確認する必要があります。そんな時にはTradosのバイリンガルレビュー機能を使用して、変更個所にあたりをつけることができます。バイリンガルレビューファイルはセグメントごとに区切ってWordファイルを生成してくれるため、旧版と新版でWordの比較機能を使用すれば、どこに変更が加わっているのか一目瞭然で確認することができるようになります。
・Trados環境外での翻訳
本来は想定されていない使用方法ですが、Wordに書き出すことでTrados環境のない状況でも翻訳作業を行うことができます。ただし、翻訳メモリや用語ベースを使用できないため、メモリのない案件等でのみ使用することをお勧めします。また、タグなどの処理も不自然になるため、最終的にはWordからTradosに手動でコピペしなければならならない状況となる場合もあります。ということで、この方法はあまりお勧めしません。と、ここまで書いて、果たして翻訳者さんはバイリンガルレビューファイルで翻訳作業をする機会があるのかという疑問が思い浮かびました。あるとすれば、コーディネーターからメインPCが壊れて、サブPCを使用せざるを得ないときなどでしょうか。
以上、長々といろんな使用方法を説明してきましたが、実はどれもTradosを使ったほうが明らかに容易に作業できるようなものばかりです。ただ、コーディネーターをやっているとどうしてもTradosを持っている翻訳者さんが少ないという状況に陥ることもあり、緊急手段として上記のような方法を試すことがあります。Tradosでの仕事をTradosを使わずに行う、矛盾しているような気もしますが、非Tradosユーザーの皆様にも快適に作業していただけるように日々イレギュラーな方法も試していきたいと思います。