Tradosとぼくと翻訳メモリの辞書的な使い方
みなさま、こんにちは。
今回も本ブログをご覧くださりありがとうございます。
さて、本日は翻訳メモリの辞書的な使用方法についてお話していきたいと思います。
Tradosで使用する辞書といえば、用語集(用語ベース)を思い浮かべる方も多いでしょう。確かに用語集は非常に役に立つアイテムではありますが、自動的に蓄積されていく翻訳メモリとは異なり、事前準備が必要という一面もあります。用語集を実用化するためには、用語一つ一つのソースを確認し、手作業で登録する手間がかかります。そのため、用語集の用語は頻出するもの、必要不可欠なものに厳選されていく傾向にあるのではないかと思います。ただ、用語集に登録されていなくても、ふと疑問に思った用語などについて、過去訳があるならば確認したいという要望もあるのではないでしょうか。このような要望にお応えするのが、「翻訳メモリの辞書的な使用」であり、「訳語検索」と呼ばれる機能です。
それでは改めて本日のテーマについて確認してみましょう。本日のテーマは「翻訳メモリの辞書的な使用方法」でした。言い換えるならば、「翻訳メモリから単語・用語単位で過去の原文・訳文を検索する機能」といったところでしょうか。通常の翻訳メモリの機能は「翻訳対象の原文」と「メモリに保存されている過去訳の原文」を1文単位で比較し、差分を表示するという機能でした。一方で「訳語検索」では一文単位ではなく、用語単位で検索をかけることができます。
少し内容が煩雑になってきたため、ここで1)翻訳メモリを適用した場合、2)用語集を適用した場合、3)訳語検索を適用した場合の3パターンで出力される結果を確認してみましょう。
【仮定条件】
例題の仮定条件として原文、翻訳メモリ、用語集を以下のとおり設定しているものとします。
■翻訳対象の原文
”The marketing department is responsible for pricing new service.”
■翻訳メモリに保存されている過去訳
原文A:”He is the manager of marketing department.”
訳文A:「彼は営業部門の部長です。」
原文B:”The task assigned to him was to do marketing research.”
訳文B:「彼に与えられた職務は市場調査だった。」
■用語集に記録されている用語
英:”new service” 日:「新サービス」
【各パターンの出力結果】
1)翻訳メモリを適用した場合
【出力結果】「表示する翻訳結果がありません」
原文と過去訳の内容は明らかに異なるため、今回の場合はメモリがヒットせず、一から翻訳する必要があります。
2)用語集を適用した場合
【出力結果】”new service” 「新サービス」
用語集に登録されている”new service”の訳語のみ出力されます。
翻訳の際には”new service”を「新サービス」と訳せばよいと確認できます。
3)訳語検索を適用した場合
訳語検索は名前のとおり、用語を検索する機能です。そのため、どの用語を検索するかは自由に選択することができます。ここでは”The marketing department”について検索してみます。
【入力】”The marketing department”
【出力結果】
原文A:”He is the manager of marketing department.”
訳文A:「彼は営業部門の部長です。」
原文B:”The task assigned to him was to do marketing research.”
訳文B:「彼に与えられた職務は市場調査だった。」
※Trados上の画面では原文Aの”marketing department”、原文Bの”marketing”に黄色ハイライトがかかっています。
訳語検索を使用した場合、翻訳メモリの中から入力した用語と部分的にでも一致する文章を対訳形式で出力します。さらに、どの部分がヒットしているのかハイライトで教えてくれます。今回の例では”The marketing department”の訳として「営業部門」を当てればいいとわかりますね。また、原文Bのように入力された用語と部分的に一致している文章についても検索結果として出力してくれるため、完全に一致することは少ないかもしれませんが、翻訳のヒントになることもあります。
今回の例題では翻訳メモリでも用語集でも”marketing department”に一致する文章・用語がなかったため、通常であれば、”marketing department”の訳を一から確認しなければなりませんでしたが、「訳語検索」で気になる用語を検索すると、翻訳メモリから部分的にだけでも一致している訳を探し出すことができます。
この訳語機能という機能は普段の翻訳でも訳に立ちますが、特に固有名詞や社内用語の確認、用語の整合性を取る際に非常に有効な手段となります。先ほどの例でも”marketing department”の訳には「営業部門」だけでなく、「営業部」、「マーケティング部」などいろんな訳の可能性があり、依頼元の企業によってどの用語を使用しているかは異なることでしょう。場合によってはどの用語を訳に当てはめるべきか、依頼元企業のwebページや参考資料を一つ一つ確認する作業も必要になるかもしれません。そういった場合に、「訳語検索」を使用すれば、意外と翻訳メモリの中にヒットする用語が見つかるかもしれません。
※ただし、定訳等を確認するためにはメモリのソースをしっかりと把握しておく必要があります。でなければ、A社の用語をB社に使用してしまうかもしれませんからね。