Tradosとぼくと原文取り込み
「コンピューターは指示された通りのことしか実行できない」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。誰がいつから言い始めた言葉かわかりませんが、プログラミングや小難しいソフトウェアに触れたことのある方であれば、聞きなじみのある言葉だと思います。
皆様の中には、Wordなどの一括置換機能で本来意図した箇所以外についてもいつの間にか置換されてしまった経験のある方がいらっしゃるのではないでしょうか。まさに「コンピューターは指示された通りのことしかできない」の実例ですね。コンピューターは人間のように自ら考えることができないからこそ、我々人間側がしっかりと範囲指定などの指示を与えてあげる必要があります。
Tradosについても同様に丁寧に指示を与えてあげなければ、思いがけない結果となってしまうことがあります。今回は原文をTradosに取り込む際に気を付けるべき点を紹介していきたいと思います。
- 原文取り込み機能とは?
以前、「訳文生成」機能について説明した時に少し触れましたが、Tradosで翻訳作業をするためには、まず初めに原文ファイルをTradosに読み込ませてあげる必要があります。操作方法は実に簡単で、新規プロジェクト作成時に原文ファイルをドラッグアンドドロップするだけです。あとは自動的にTrados用のファイル形式(.sdlxliff)に変換してくれます。といったように、操作自体は簡単ですが、この原文取り込み作業によって、前回お話しした「解析レポート」の結果が変わってきますので、正確な作業量、お見積りを決定する上で、重要な作業となります。
- Tradosの思考回路
ここで一つ、原文取り込みについて、Tradosの考え方を確認しておきます。Tradosは編集可能な文字データであれば全てTrados内に読み込むように設定されています。よくある注意点として、いくつか具体例を挙げてみましょう。
・文字データ化されていると思っていた箇所が画像データだった。
・Excelファイルで翻訳不要のシートまで読み込んでしまった。
・Excelグラフの埋め込まれているPPTやWordファイルで(実際に画面に表示されていない情報を含めて)Excelの内容すべてを読み込んでしまった。
・PPTファイルの目視で確認できるスライド内容の他に、下部レイヤーに下書きが残っていて、下書き部分まで読み込んでしまった。
などなど、上記はほんの一例ですが、クライアントからご依頼いただくファイルは様々な機能を駆使して作成されているものがあります。その都度、パワーポイントにはこんな機能や使い方があったのかと驚かされるばかりです。
- 対処方法
ただ、技巧的なつくりのファイルに呆然と驚いているだけでは、正確なお見積りを作ることはできません。いくつかの対処方法もありますので、紹介してみます。
- 原稿の内容と比較して明らかに文字数が異なると思われるファイルをWordの文字カウント機能で再チェックする。
- Tradosの内容と原稿を照らし合わせながらチェックする。
- Tradosで完成した訳文で訳文生成を行い、抜けがないか確認する。
特に2はかなり有効的なチェック方法ですが、すべてのファイルに対して一文ずつ確認していてはいくら時間があっても足りません。そのため、大抵は1のみの確認となります。
今回はTradosの原文取り込みとその注意点についてお話しました。翻訳会社としてはお見積りの作成、スケジュールの調整などの後工程全てを最初に作成した解析レポートに準拠して決めていきます。そのため、最初の工程で間違えてしまうと、納期間近で翻訳個所の追加やお見積りの修正などが発生してしまいます。今後も自戒の念を込めて原文の確認には細心の注意を払っていきたいと思います。