Tradosとぼくと解析レポート
みなさま、こんにちは。
いつも本連載をご覧くださりありがとうございます。
本日はTradosの解析レポートについてお話していきたいと思います。
前回お話しした訳文生成はTradosを使用する際に、一番ドキドキする工程でしたが、今回の解析レポートは個人的に一番わくわくする工程です。
解析レポートとは?
「解析」と聞くと、何か難しいことなのではないかなと思うかもしれません。けれども、難しい計算などはTradosが内部ですべて処理してくれるので安心してください。さて、解析レポートについて端的に説明しますと、「原文の文字数を一覧化した表」のことです。
産業翻訳に少しでも関わったことのある方であれば思い当たる節があるかと思いますが、翻訳サービスでは基本的に文字数ベースで料金を設定しています。クライアントへの請求も翻訳者さんへのお支払いも文字数が基準となっています。
通常はWordの文字カウント機能などを使うのですが、ファイル数が多くなってくると文字数を確認するだけでも一苦労になってきます。さらに、ExcelやPowerPointの資料などであれば、ファイル形式を変換する必要もあるので、大量のファイルの文字数を確認するとなると考えただけでも嫌になってしまいます。
そこで、Tradosの出番です。Tradosでは複数ファイルを1つのプロジェクトとして読み込むことができるため、100ファイルの案件であろうと、200ファイルの案件であろうと、一度Tradosに読み込んでしまえば、解析レポートとしてすべてのファイルの文字数を一覧化してくれます。さらに、Tradosでは1つのプロジェクトの総分量をまとめて集計する機能があり、総分量と各ファイルの詳細を1つのレポートで確認することができます。
あいまい一致
解析レポートは単に文字数をカウントしてくれるだけではありません。Trados特有の機能についてもきめ細かくアプローチしてくれます。例えば、翻訳メモリ(TM)を使用する案件においても極めて効果的にレポートを作成してくれます。以前、翻訳メモリの説明でも簡単に触れましたが、Tradosは全く同じ文章でなくともメモリの一致率に応じて99%などの割合で評価する機能を持っています。解析レポート上ではこうした部分的な一致(あいまい一致)を細分化してそれぞれのマッチ率に応じた分量を教えてくれます(例えば、50%-74%は○○ワード、75%-84%は××ワードといったように)。こうした評価に基づいて解析レポートでは翻訳メモリに全く一致しない文章を「新規」として提示します。
純粋に翻訳作業が必要な原文はこの「新規」の分量となるので、我々コーディネーターや翻訳者さんはこの新規分量を頼りに翻訳にかかる工数や時間を見積もることができるようになるのです。
一見すると分量の多い案件を短納期で依頼いただいたときに、どうやってアプローチしていこうかと思い悩むこともあります。悩んでいるときにも、とりあえず分量の確認をしようと思ってTradosに読み込ませてみると思いのほか翻訳メモリが当たるということも少なくありません。見た目の分量に反して、実際に翻訳をする「新規」分量がごくわずかだった時は思わず歓喜の声をあげそうになります。一方でマッチ率が高そうだなと捕らぬ狸の皮算用をしながら、Tradosの解析にかけてみると、翻訳メモリがあたらず、落胆してしまうことも多々あります。
Tradosは淡々と与えられた仕事をしているのに対し、解析結果を見て一喜一憂する毎日です。