婉曲表現のご紹介(11)「お金の使い方」
今回は和訳レッスンを一休みし、「お金の使い方」に関連する婉曲表現をご紹介します。ぜひ肩の力を抜いてお読みください。
私たちがこの世に生きていくにはお金が必要ですが、だからからか、お金にまつわる言葉がたくさんあります。ただ、一口に「お金にまつわる言葉」といっても、良いニュアンスの言葉も悪いニュアンスの言葉もあり、悪いニュアンスの言葉は使い方を誤ると大変なことになりますので気をつけなければなりません。
まず良いニュアンスの言葉から見ていきましょう。thrifty(金の使い方がうまい)、frugal(倹約する)、prudent (倹約する)は良いニュアンスのある言葉ですので、そのまま使っても問題ありません。
詳しく見ていくと、thriftyはプラスのイメージが強く、a thrifty housewife といえば、「やりくり上手な主婦」という意味になります。economical も比較的良いニュアンスがある言葉で、economical shoppersで「買い物じょうずな客」という意味になります。frugalは、thriftyよりも倹約の度合いが強くなり、She is frugal with her money. といえば「彼女は財布のひもが固い」というニュアンスになります。prudentは、お金のことだけでなく、一般的なことがらに対しても「慎重な」「分別のある」という意味があります。
悪いニュアンスの言葉としては、avarice(金銭に対する貪欲)、cupidity(金銭欲)、meanness(けち)、stinginess(しみったれ)、parsimony(吝嗇)、miser(守銭奴)、greed(欲張り)、stingy(けちな)などがあります。これらは非常に辛辣な言葉ですので、人を形容するときには注意が必要で、できれば婉曲的に表現したほうが安全です。
そこで今回は、これらの悪いニュアンスの言葉を遠回しにいう婉曲表現をご紹介しましょう。「トーンダウンはするものの、言いたいことはきちんと伝えられる」といった便利な表現です。
○tight
同じ意味なのにニュアンスが違う形容詞を3つ並べて遊ぶゲームがあるそうで、その一例として「I am thrifty, you are tight, he is stingy.」というのがあります。さきほど見たようにthriftyは良いニュアンスがありますが、stingyはその対局にある言葉で悪いニュアンスの言葉です。tightはthriftyほど良いニュアンスはなくても、stingyほど悪いニュアンスのない言葉ということになります。例えば、He is tight with his moneyといえば、「彼は金に細かい」といったニュアンスになります。ただしイギリスではtightといえば、tight-fisted(しみったれの)と同じくらい非難のニュアンスが強くなりますので注意が必要です。
○close
これはイギリスでよく使われる表現ですが、tightとニュアンスが似ています。He is close with his money. (彼はしみったれている)のように使われます。
○careful
使っている状況によって良い意味にも悪い意味にも使える便利な言葉です。He is very careful (with his money).と言えば、状況によって「彼はしまり屋だ」という意味にも「彼はけちくさい」という意味にもなりえます。
ポジティブなニュアンスの形容詞を否定形で使うのも一つの手ですが、ネガティブなニュアンスが強くなります。例えば、ungenerousはgenerous(物惜しみしない)の否定、no tipperはtipper(チップをくれる人)の否定ですが、ダイレクトに否定しなくても、十分に否定的なニュアンスが伝わります。
否定的な言葉はたった1語でも人間関係にヒビを入れかねません。たとえ「ケチ」だと思う人がいたとしても、その人を形容するときは、どちらでも取れる婉曲表現を使うのにとどめておいたほうがよさそうですね。以上、今回は「お金の使い方」に関する婉曲表現をご紹介してみました。
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