第322回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート73
出版翻訳家デビューサポート企画レポートをお届けします。第318回に引き続き、アーティストの評伝を持ち込んでいるIさんの進捗状況をお伝えしていきます。
持ち込んでいたL社からは図版のクレジットなどについてもお問い合わせがあり、希望が持てそうな気がしていたのですが、収支がかなり厳しそうなので見送りたいというお断りがありました。
ところが、編集者さんからふたたびご連絡があり、見込みは薄いものの、版権の空き状況を確認したうえで最終決定をくだしたいとのお申し出があったのです。版権確認の結果は遅くても1週間以内にはわかるとのことでしたので、Iさんはその結果を待つことにしました。
1週間ほど経ったところでリマインドすると、版権エージェントからまだ連絡がないので、版権担当が催促するというお返事がありました。
Iさんは引き続き待つことにしましたが、条件面などを考えると、別の出版社の意見も伺いたい気持ちがありました。L社はきれいな本をつくる出版社で、その点では魅力を感じるものの、もう少しIさんの企画に商業的な可能性を感じてくれる出版社はないのだろうかと思ってしまうそうです。また、本の売り方についてのL社独自のスタンスも気になりました。
そこから10日以上経過した時点で、Iさんから以下のご相談がありました。
①最長でどれくらい待つべきか。
②さらに催促する場合、失礼のない、角の立たない訊き方はどのようなものか。
③いったんご検討をペンディングにしていただき、他社の意見を伺いたい旨を伝えてもいいのか。
①については、Iさんの気持ちがむしろ他社に傾いているのであれば、十分待ったと判断してもいいかもしれません。ちょうど新年度になった頃でしたので、それを機に話を切り出すことができます。
②については、原著者に関連する記念の年が来年に迫っているので、Iさんとしてはそれまでに目処だけでも立てたいとのこと。それならば、そのことを正直にそのままお伝えして差し支えないと思います。
③について、失礼すぎるのではとIさんは悩んでいました。けれども、いったんお断りがあったことと、あまり納得のいく条件をご提示いただいていないことを考えれば、お伝えしても差し支えないとアドバイスしました。こだわりの企画を納得のいかない形で出すよりは、他社にあたってみたほうがいいかもしれません。
結局、L社にはIさんのほうから辞退させていだくことになりました。編集者さんは誠意をもって対応してくださいましたが、条件的には、やはり納得できるとは言い難かったからです。
Iさんによれば、ほぼボランティアの仕事になってしまうだけではなく、場合によっては金銭的な負担が生じる可能性もあるとのこと。「この企画で大儲けしようとはまったく思っていませんが、さすがにここまでいくとつらいです」というIさん。たしかに、これでは自費出版とさして変わらないように思えてしまいます。
Iさんは、すぐに次の手を打ちました。L社につないでくれた批評家の方にお願いして、M社を紹介していただけることになったのです。この批評家の方が企画書を編集者さんに渡してくださるというので、Iさんはお預けしてご連絡を待つことになりました。
また追ってレポートしますね!
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