第311回 出版記念イベント
週末に、酒井瞳さんの出版記念イベントに参加させていただきました。出版記念イベントには、出版社や書店が主催するものが多いですが、今回のイベントは酒井さんの主催です。
酒井さんがアメリカから、韓国にいらっしゃる著者のキム先生と、日本や海外の参加者をオンラインでつないで開催されました。酒井さんのご挨拶の後、書籍の概要紹介に続いて、キム先生から本書についてスライドを交えたご講演があり、それを受けて参加者との質疑応答がありました。酒井さんは、当日の司会進行のほか、通訳も務められていました。
翻訳家が主催しての出版記念イベントはあまりないものですし、事前準備から通訳まで務めるのはかなり大変なことですが、こういう形で開催できたのはとても意義深いことだと思います。
考えてみれば、コロナ禍の前までは、著者を招いて開催するイベントというと、リアルイベントに限られていました。海外から招待するわけですから、交通費や宿泊費など、それだけでもかなりの費用が発生します。加えて、出演料なども必要になりますし、会場費もかかります。すると、それだけの費用が回収できる見込みがないと開催できないことになり、開催のハードルが高くなってしまいます。個人で開催するとなったら、なおさらです。
それがオンラインでこうして翻訳家主催で開催できるというのは、これから翻訳書を出版する方たちにも、とても励みになるのではないでしょうか。著者に惚れ込んで「何とかこの著者の作品を日本の読者に届けたい」というケースもあるでしょう。それが出版を機に、会いたかった著者とこういう形で会って、交流を深めていくこともできるわけですからね。
著者を招く形での出版記念イベント以外にも、翻訳家がメインで出演するイベントもあります。翻訳家に話を聞くという形で、書店に招かれて講演形式で話をするものや、ホスト役の方とトークショー形式で話をするものもあるでしょう。また、出版社や書店の主催で読書会を開催する場合もあります。読書会は、同じ本でも参加者によってかなり感想が違い、まったく違う会になるものです。
必ずしも出版記念イベントを開催する必要はないですし、そういう場が苦手な方もいらっしゃるでしょう。でも、イベントをきっかけに本の存在を知っていただけることはやはり多いものですし、読者と実際に話をしたり感想を聞けたりする機会は貴重なものです。私も一読者として他の方のイベントに参加することがありますが、そういう経験があると、やはりその本が「自分にとって特別な一冊」になるんですよね。
どういう形のイベントがいいのかは、本によっても変わってくるでしょうが、トークショーをやって、それとはまた別に読書会をするなど、違う形式のものに挑戦してみると、それぞれに違う形で本の魅力を参加者にお伝えできるかと思います。
持ち込みの成果が出ない時期はモチベーションがどうしても下がってしまうものですが、そんな時は出版後の楽しみを考えることも、モチベーションの維持に役立ってくれると思います。どんな出版記念イベントをしたいか、ぜひ考えてみてくださいね。
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