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第308回 版権交渉に割り込んでもいいの?

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

せっかく企画が通過したのに、その後の版権をめぐる出版社同士の交渉に時間がかかっていて、話が進まない……。そんな時、自分が間に入りたくなってしまうかもしれません。こういう場合に、翻訳家が割り込んでもいいのでしょうか?

基本的には、これは出版社同士の交渉ですので、翻訳家が介入することではありません。うまく交渉がまとまることを願って待つことにして、その間に翻訳や調べものなど、自分にできることを進めておきましょう。

ただ、例外的に、間に入ってくれるように日本の出版社に頼まれることがあるかもしれません。たとえば、現地の出版社と連絡がつかなくなって、関係者と連絡を取れないか、翻訳家のルートであたってほしいと言われる場合です。そういう事情であれば、介入することはあるでしょう。

他にも、交渉が何らかの理由で止まってしまっている場合もあるかもしれません。現地の版権交渉の担当者が辞職してしまって、後任にうまく引き継ぎがされていない時など、話が進まない事態が起こり得ます。書籍の見本などの必要な情報が日本側に届いていないこともあります。そういう状況であれば、個人的に現地の関係者に連絡をとって、話が動くように働きかけることも考えられるでしょう。

最近では、円安の影響で版権が高額になってしまったために、交渉が難航することもあります。現地の出版社から最初に提示された金額が高すぎて、日本の出版社には難しく、引き下げてもらってようやく取得できたという話も聞きます。

現地の出版社との認識の違いもあるでしょう。現地では人気の作家なので売れるだろうと見込んで強気で価格を提示してきたけれど、日本の出版社は規模が小さく、金額的に対応できないので断りかけたという話も聞きました。そこで、翻訳家が著者に頼み、著者が現地の出版社を説得して、価格面を再考してもらったことで、出版できる運びになったそうです。

ようやく企画通過までこぎつけたのに、版権交渉のところでうまくいかなかったら、翻訳家としては泣くに泣けないですものね。そういう「奥の手」もあると知っておくと、いざという時に役に立つかもしれません。もちろん、たいていの場合は時間がかかってもまとまるものですので、あまり心配せず、自分が今できることに専念するようにしましょう。

翻訳家から著者を通して働きかけることに関連して、著作に関する質問を著者に直接送ってもいいのかというご質問もありました。通常は、たとえ著者の連絡先がわかっていたとしても、編集者さんからエージェントを通して送るようにします。

もちろん、著者と以前から知り合いであったり、普段から交流をしていたりするのであれば、直接やり取りしたほうが早いでしょうし、それで問題ありません。でも、そうでなければ、質問内容を適宜まとめた上で、編集者さんからエージェントを通して訊いてもらいます。もし、なかなかお返事がない場合でも、著者に直接プッシュするのではなく、編集者さんからエージェントに再度確認してもらうようにしましょう。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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