第299回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート67
出版翻訳家デビューサポート企画第2期生のレポートをお届けします。第294回に引き続き、海外在住のMさんの進捗状況をお伝えしましょう。
持ち込み先からのお返事を待つ間、着々と次の作品の翻訳を進めていたMさん。早くも3冊目の自然科学絵本の企画書と試訳が完成しました。
こちらの絵本も他の2冊と同じ著者によるもので、自然科学とファンタジーを融合した持ち味が活かされています。最初にご紹介した作品に登場したおじいさんと女の子が、今回の作品では幻の動物を探す旅に出かけます。お目当ての動物を見つけることはできなかったものの、そのプロセスを通して女の子は自然の不思議に触れ、好奇心を育てていくのでした。
拝読して連想したのは、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』。日本の読者にも出版社にも受け容れられやすい、いい作品だと感じました。
絵の中には、この幻の動物が見開きごとに隠れていて、それも楽しめるようになっています。一見すると気づかないのですが、実は人物の影や他の動物の体の一部に描かれているのです。『NEWウォーリーをさがせ!』シリーズのように、変わらない人物をページごとに追っていく絵本はありますが、こういうふうに様々に姿を変えて登場するのを探すタイプの絵本は珍しいので、その点も高く評価されるのではと思いました。
企画書と試訳を拝見したところ、特に気になる箇所はありませんでした。細かい表記ゆれを指摘する程度でしたので、実質的な変更はありません。もともとMさんは完成度の高い方ですが、量をこなすことで、さらに完成度を上げている印象を受けました。
Mさんは本書の著者と波長が合うようで、4冊目もすでに試訳を用意し始めたそうです。ただ、この作品だけは自然科学を題材にした絵本ではないとのこと。そこで、こちらも他の3冊と一緒に持ち込むべきか、それとも自然科学絵本はそれだけで3冊まとめて、この作品は別に持ち込み先を検討するべきなのか、Mさんからご質問がありました。
同じ著者なので、できれば同じ出版社から出していただけるのが理想です。自然科学絵本に興味を持ってくれたら、他の作品も検討してくれる可能性は高いと思います。なので、「こういうのもありますよ」という形で一緒に提案してみるのがいいでしょう。どんな作品かにもよりますが、自然科学絵本のほうをまず前面に出すほうが企画としては通しやすいはずです。
「著者の魅力を広めるために頑張ります!!」というMさん。こんなふうに、「この人をぜひ知ってもらいたい」と思うような著者に出逢えると、励みになりますよね。持ち込みでは「この作品をぜひ日本に届けたい」ということがモチベーションになるものです。それがひとつの作品だけでなく著者となると、訳したい作品も複数見つかりますし、「推し活」気分で持ち込みも楽しめるのではと思います。
さて、この連載も次回はなんと第300回! せっかくなので特別企画をご用意しました。次回に詳しくご紹介しますね。
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