第291回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート63
出版翻訳家デビューサポート企画第2期生のレポートをお届けします。前回に引き続き、アメリカ在住のEさんの進捗状況をお伝えします。
C社のお断りを受けて、Eさんは次の持ち込み先を考えました。A社からお断りがあった際、興味を持ってくれそうな出版社をいくつか教えていただいていました。その中から、まずはD社に持ち込むことにします。そこで、Eさんからこんなご質問が。
「A社の編集者さんからご提案いただいたことを書くべきなのでしょうか? それとも、それには触れずにおいたほうがよいのでしょうか?」
通常は他社に持ち込んだことは伏せておいたほうがいいかと思いますが、今回の場合は、そうするとなぜD社を選んだのかという理由がお伝えしづらくなってしまいます。A社の編集者さんが提案したということは、D社に持ち込むことに説得力を持たせてくれる材料ですので、これは活かしたいところです。そこで、「ご相談に乗っていただいた編集者さんに、D社ならこの企画に興味を持っていただけるのではないかと伺ったから」という形にしました。
ただ、それだけではなく、実際にD社の刊行作品に目を通してしっかり下調べをすることが大切です。D社の公式サイトを見てみると、「これはEさんの作品に通じるものがあるのでは?」と感じる作品がありました。
こういう作品を探す時には、第40回でご紹介した「装幀選書術」を活用することをおすすめします。装幀の雰囲気にピンとくるものがあれば、その作品紹介を見てみましょう。一つひとつの作品情報をチェックしていくのに比べて、高い精度で効率よく類書を見つけることができます。
見つけた作品を試し読みしてみると、Eさんの企画と雰囲気的に合いそうです。この作品に目を通してみることをEさんにはおすすめしました。そのほうが、「だからD社を選んだ」という理由づけもはっきりしますし、実際に合う、合わないの判断もしやすいはずです。それに、本に担当編集者さんのお名前があれば、その方宛てにお送りしたほうがお返事をいただきやすいでしょう。
Eさんはこの作品に加え、かねてから読みたかったというD社の刊行作品も、この機会に読むことにしました。読んでみると、どちらの作品も同じ編集者さんが手がけていることがわかりました。そこで、D社の公式サイトのお問い合わせ欄から、この編集者さん宛てにメッセージをお送りしました。両作品の感想を添えて、なぜD社から刊行したいのかをお伝えしています。
早速お返事をいただけたのですが、残念ながら企画書と試訳を見ていただく前のお断りでした。D社ではかなり先まで翻訳出版スケジュールがすでに埋まってきているため、別の企画を動かす余裕がないというのが理由です。
ここで、Eさんから再度ご質問がありました。
「潔くお礼の返事だけして次に行くべきなのか、せめて企画書を見てもらえないかもう一押しするべきなのか迷っています。どう思われますか?」
これはかなり悩ましいところです。ただ、通じるものがあった2作品とも同じ方が編集されていたということは、感覚的な部分でEさんと合う可能性は高いのかと思います。このまま終わってしまうのは惜しい気がするのです。
出版スケジュールがかなり先になっても構わないのかをEさんに確認すると、先のほうがそれまでに全体の翻訳を完成させておけるので、逆にありがたいとのこと。それなら、もう一押ししてみてもいいもしれません。しつこくしてご迷惑になることは本意ではないことをお伝えしつつ、やはりどうしても見ていただきたい旨をメールでお送りすることにしました。
すると、企画書をお送りくださいとのお返事が……!
まずは見ていただけることになり、一歩前進です。時と場合によりますが、ご縁のありそうな方だと感じた時には、こうして一歩踏み込んでみることで、道が拓けることもあるでしょう。
また追ってレポートしていきます。
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