第290回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート62
出版翻訳家デビューサポート企画第2期生のレポートをお届けします。今回ご紹介するのは、アメリカ在住のEさんです。
Eさんは著者と相談のうえで、A社に持ち込むことにしました。お問い合わせ欄からご連絡して企画書と試訳をお送りしたところ、2週間ほどでお返事がありました。結果は残念ながらお断りでしたが、A社の営業上の制約など、お断りに至った理由をていねいに説明してくださいました。さらに、興味を持ってくれそうな他の出版社を複数教えてくださるなど、親身なアドバイスまでありました。すべての出版社がこんなふうに対応してくれたなら、誰もが落ち込むことなく持ち込みを続けていけるだろうと思えるような、愛情のこもった対応でした。相当時間をかけてくださったのだと思います。また、作品やAさんの端正な訳文への評価もいただきました。
次に持ち込むことにしたのは、B社です。B社には私の知人の編集者さんがいて、その方が好きな作品なのではないかと思ったのです。ただ、B社のラインナップに純文学はどうだろう……という気がかりもありました。編集者さんにその点もお尋ねしてみたのですが、なかなかお返事がありません。リマインドしたところ、状況からB社では出版は難しいかと思いながらも、見てみたいとの思いがあり、お返事が滞ってしまったそうです。「このような事情でよければ、ぜひ拝見したい」とのことでしたので、企画書と試訳をお預けしました。
いつもお忙しい方なので、検討に少なくとも1か月はかかるだろうと思っていましたが、1か月を過ぎてもご連絡がありませんでした。そのタイミングでちょうどオンラインの会でご一緒する機会があり、個別にお話はできなかったものの、ご一緒すること自体がリマインドの役割を果たしてくれたはずです。そう考えて待っていたのですが、お盆休みも過ぎて、お預けしてから1か月半以上経ってもまだご連絡がありません。そこでリマインドしてみたところ、B社では難しいというお返事で、詳しい理由を教えていただくことはできませんでした。そこに時間を割くことが難しい状況なのだろうと考え、しいて理由をお尋ねすることはしませんでした。
気を取り直して、次はC社へ。C社にもやはり、私の知人の編集者さんがいます。文芸担当ではありませんが、読んでよかった小説やお気に入りの作家さんについて普段からやりとりする機会があるので、この作品も好みに合うのではないかと思ったのです。お尋ねしてみると、その編集者さんの部署では基本的に小説は扱わないため、知人を介して文芸の翻訳担当の方に持ちかけてみてくれるとのことでした。
1週間ほどでお返事があり、C社では難しいとのことでした。知人を介してなので詳しい理由は聞けなかったそうですが、おそらく、翻訳部門の人員が少ないために、なかなか手を広げにくいのではないかとのことでした。
ここまでお断りが続いているものの、Eさんはめげずに次へ、次へと進めてきています。「残念な結果でやはり凹みはしますが、寺田さんに伴走していただいているので、うじうじと立ち止まってはいけないと気持ちを切り替えやすい気がします」とのこと。ひとりだと、どうしても落ち込む時間が長くなりがちですよね。
ひとりで持ち込みを続けている方の場合、落ち込みを長引かせない工夫が大切になると思います。たとえば、次のようなものです。
・落ち込みに制限時間を設ける
「落ち込むのは5分だけ」と時間を決めておきます。その代わり、その時間内は好きなだけ落ち込んでかまいません。5分では短すぎるという方は、慣れないうちは1日としてもいいでしょう。その日はとことん落ち込む代わりに、翌日からは気持ちを切り替えるのです。それができるようになったら、徐々に、半日、1時間……と減らしてみてください。
・周囲の力を借りる
家族や友人などに、あらかじめ状況を伝えておいて、「もし断られて落ち込んでたら、『それで、次はどうするの?』って訊いて」とお願いしておきます。次に向かえるようにサポートしてもらいましょう。
・次の行動を決めておく
A社がダメだった場合はB社、という具合に次の一手を考えておきます。やるべきことが具体的になっていると動きやすいので、持ち込み行動を細分化して、「B社の公式サイトを見て持ち込みの可否を調べる」「企画書をB社仕様に変更する」「B社宛ての文面を用意する」などと用意しておいて、次々に動けるようにしておきましょう。
さて、Eさんはもう次に進んでいます。また追ってレポートしますね!
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