第287回 出版後の営業って、どうするの?
出版翻訳家デビューサポート企画にご参加の方々と、Sさんこと酒井瞳さんの出版お祝い会を開催しました。酒井さんの翻訳された『二つ以上の世界を生きている身体』は明日8月22日発売ですので、ぜひご覧になってみてください。来週にはデビュー記念インタビューをお届けいたします。
お祝い会では、出版後の営業についてご質問がありました。以前にも第75回に「出版翻訳家と営業」、第119回に「出版翻訳家と営業~コロナ禍の変化」という記事を書いていますので、そちらもご参照いただければと思います。
出版後の営業について、あらためてまとめてみますね。
・献本
これについては第255回の「献本って、どうするの?」に詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。
・周囲の方々への告知
出版社の書籍紹介ページやオンライン書店の書籍掲載ページへのリンクとともに、「こういう本が出ますので、ご高覧いただけたらうれしいです」という旨のお知らせをするとともに、知人の方へのご案内やSNSなどでのご紹介をお願いします。ご紹介をお願いするかどうかについては、ジャンルによってかなり違いがあると思います。自己啓発書などではかなり押しの強い営業が標準のようになっていることもありますが、他のジャンルからすると標準的ではないと思います。お願いする相手のご負担にならないように配慮しましょう。
・個人のSNSでの告知
ブログやX、Facebook、InstagramなどのSNSで告知をしていきます。
・メディア向けの告知
新聞や雑誌などのマスメディアからウェブメディアやソーシャルメディアまで、取り上げていただけそうなメディアに伝手があればお願いしてみましょう。伝手がない場合でも、企画の持ち込みの時と同様に、伝手を探してつくります。それが難しい場合には直接お送りしてもいいでしょう。ただ、出版社のほうですでにメディア対応をしてくださっている場合に、重複したり意図の食い違いが生じたりしないように、事前に確認してすり合わせをしておくことをおすすめします。
・書店営業
翻訳家がすることはまずないでしょうが、私は以前、注文書(書店側がこの用紙に冊数を記入して出版社宛てに発注できるようになっています)を持って書店を回っていました。そこまでせずとも、書店で本を置いていただいているのを見かけた時に、書店員の方にご挨拶してみてもいいと思います。「私は本書の翻訳を手がけた者です。置いてくださってありがとうございます。ご担当の方にご挨拶させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」と近くにいる書店員さんにお尋ねしてみましょう。ご担当の方がいらっしゃれば、つないでくださると思います。ただ、書店員さんも忙しくてあまり時間が取れないことが多いので、簡単なご挨拶で切り上げるようにしましょう。書店員さんがその本を気に入ってくれていたり、読んでくれていたりすれば、お話が弾むこともあるかもしれません。
最近は書店の数が減ってしまっていますが、代わりに独立系書店と言われる、店主の品揃えにこだわりがあるお店が増えてきました。本の内容とうまく合う書店があれば、店主の方宛てにお送りするか、直接足を運んでお話をしてみるといいでしょう。
・図書館営業
これは基本的に出版社のほうでやることですが、書店向けの営業だけでなく、図書館向けの営業もあります。図書館に置いていただけそうな本であれば、担当編集者さんに図書館営業をしていただけるようにお願いしてみましょう。他に、個人としても、周囲の方に図書館へのリクエストをお願いすることができます。その方のお住まいの地域の図書館に本が入っていない場合に、リクエストしていただくのです。以前に私が新刊発売のご案内をさせていただいた方から「いつも行く図書館になかったので、リクエストしました」というお手紙をいただいて「そうか、リクエストして入れていただくという手があるのか」と気づきました。
どこまでやるかは人それぞれですので、自分にとって無理のない形を探ってみてくださいね。ご参考になればうれしいです。
※拙著『古典の効能』の読書会を9月28日(土)に浅草の書店さんで開催いたします。この連載の読者のみなさまともお会いできればうれしいです。
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