第282回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート58
前回に引き続き、海外在住のMさんの進捗をレポートします。
電話をかけたことで持ち込みができたA社から、早くもお返事がありました。結果は……残念ながらお断りでした。絵本パックの内容は楽しんでいただけたものの、今の日本で出版するには販売の面で少し難しいとの理由です。
実は、その数時間前に、ノンフィクション絵本を持ち込んでいたZ社からも、お断りのお返事があったそうです。立て続けに断られたら、「どっちもダメだなんて……」と落ち込んでしまいそうなところですが、そうはならないのがMさんのすごいところです。
以前にA社にこのノンフィクション絵本の持ち込みを打診した際にまったくお返事がなかったそうで、「これはタイミング的にちょうどいいと思い、続けてノンフィクション絵本も見ていただけるか打診した」というのですから、感心してしまいます。
「送ってください」と言われ、企画書と試訳を早速お送りしたところ、翌日A社からお返事がありました。とても大切なテーマではあるものの、センシティブなテーマでもあり、出版は難しいとのことでした。
Mさんはご検討へのお礼をお伝えしたうえで、現在別の絵本も翻訳中であることをお知らせしました。そちらは自然科学の要素をもつ絵本なので、完成したら持ち込みさせていただいてもいいかお尋ねしたところ、ぜひご紹介くださいというご返信をいただけたそうです。
ひとつダメでも次に、さらにまた次に、とつないでいけるのがMさんの強みですよね。繰り返しアプローチすることで、相手の編集者さんもMさんのことを覚えてくださっているでしょうし、今後いろいろとご一緒していくうえでの種まきだと思って取り組まれるといいのではないでしょうか。
自然科学系のものは、企画も通しやすいように感じます。同じイラストレーターさんの作品でも、自然科学系の作品だけ翻訳されているのを見かけます。
ノンフィクション絵本については、A社やZ社のお断りの理由を考えると、日本で出版するのは難しいかもしれないとMさんは思いましたが、A社の編集者さんのメールによれば、お断りにあった詳細はA社としての考えであり、他社ではこの限りではないとのこと。社交辞令だとしても、それをもう少しの間は信じてがんばってみるそうです。
実際、捉え方というのは本当にそれぞれなので、当たってみるまでわからないものなんですよね。このノンフィクション絵本はたしかにセンシティブな内容を取り扱っていますので、「これは難しいな」と判断する出版社が多いのかもしれません。だけど、「これはおもしろい。こういう作品こそ、ぜひうちで手がけたい」と意欲を示す出版社もあると思うのです。
電話攻撃に味をしめたというMさんは、同じく以前ご返信をいただけなかったY社に電話をかけて編集者さんのメールアドレスをいただき、ノンフィクション絵本の企画書と試訳を持ち込むことができました。
また、「めげている暇もありませんので」と、絵本パックについても、あらかじめ考えていた次の持ち込み先のB社に、プリントアウトして用意していた企画書と試訳を発送したそうです。
「なかなか結果が出なくてもどかしいですが、転んでもただでは起きぬの精神を思い出して、お断りの中に何かひとつでもポジティブな部分を見つけられるようにしたいと思います」というMさん。何事もそうですが、思いや考え方や行動があって、それに結果がついてくるものです。だから、Mさんの場合、結果が出ないわけがないと思うのです。あとはそれが、どのタイミングになるかだけですね。
「やはり努力したら結果が伴うというところを他の読者の方にしっかり見せなければいけないとも思ってもいます」「夢を叶えようと一緒に頑張っている他の読者のためにも」いいご報告をしたいというMさん。読者のみなさんも、その奮闘にきっとたくさんの刺激をいただけているのではないでしょうか。ぜひお手本にしながら次へ、次へと進んでくださいね。そして、一緒にMさんを応援していただけたらうれしいです。またレポートしていきます!
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