第281回 ファーストコンタクトは、どうすればいいの?
今回の連載では、いただいたご質問にお答えします。
「企画書も試訳も用意ができて、どこに持ち込むかも決まりました。公式サイトを見たところ、持ち込みお断りの旨の記載はないことも確認できました。お問い合わせ欄からご連絡しようと思ったものの、何をどう書いていいかわかりません……。見本の文章があったら参考にさせていただきたいのですが、可能でしょうか?」
こういうふうに、準備ができていても、何をどう書いていいかわからずにファーストコンタクトでつまずいてしまうケースは意外と多いのかもしれませんね。
そこで、ひとつのサンプルとして、料理に関する原書を持ち込むとして、お問い合わせ欄からご連絡する際のメールを書いてみたいと思います。
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〇〇さま
(←事前にリサーチした類書の中で、その本の担当編集者さんのお名前がわかれば、その方宛にお送りしましょう。ない場合は「ご担当者さま」となります。)
はじめまして。〇〇と申します。
この度は御社で翻訳出版をご検討いただきたい企画があり、ご連絡差し上げております。
原書は、アメリカを中心に世界各国で現在話題となっている新しい調理法についての本です。発売以降、〇〇や〇〇などのメディアにも取り上げられたほか、予約の取れない人気店〇〇がこの調理法を取り入れるなど、シェフの間でも大きな注目を集めています。
(←原書の概要と、それがいかに話題になっているかをお伝えします。そういう形でのアピールが難しい場合は、本の魅力を自分の言葉で伝えましょう。)
〇〇さまの手がけられた『〇〇〇〇』を拝読し、最新の調理法を日本の食卓に合わせてわかりやすくご紹介しているところに、とても感銘を受けました。実際に私も〇〇や〇〇のレシピを試してみたところ、大変おいしく、我が家の定番にさせていただいております。
(←その編集者さんが手がけられた本やその出版社から刊行された本を読んだことや、それに対する感想、具体的に自分にどう響いたのかをお伝えします。)
本書の内容も『〇〇〇〇』に通じるものがあり、ご関心をお持ちいただけるのではないかと思い、ご連絡を差し上げている次第です。『〇〇〇〇』同様、御社の〇〇〇〇シリーズのラインナップとしてふさわしいのではないかと思っております。
(←どうしてその出版社に持ち込んでいるのか、実際にそこから刊行されるとしたら、どういう形になるのかをイメージしやすいようにお伝えします。)
私はこれまで3年ほど翻訳の勉強をしながら、自宅で料理教室をしている者です。本書の調理法についても、実際に私の料理教室で取り入れており、生徒の間でも大変好評で、近所のレストランの新しいメニューにも取り入れていただいております。
(←翻訳に関する実績や、それ以外に原書の内容に関係する実績があることをお伝えします。原書が日本で読まれる可能性があることも、ここではあわせてお伝えしています。)
具体的な内容につきましては、企画書と試訳をご用意しておりますので、ぜひご覧いただけましたら幸いです。お送りしてもよろしいでしょうか?
ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。
家庭料理アドバイザー 〇〇
(←名前と、何か肩書があれば記載します。ここでは、今適当にサンプルとしてつくった肩書をつけています。持ち込み先が実用書などの出版社であれば、このように独自の変わった肩書でもいいでしょう。ただし、学術書など専門色の強い場合はかえって信頼を損なう場合もあるので、使わないほうがいいかもしれません。なお、使う場合には冒頭の「○○と申します」の箇所で、「家庭料理アドバイザーの○○と申します」としてもいいでしょう。)
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企画書でお伝えすることと、ファーストコンタクトでお伝えすることは、基本的には同じです。翻訳する価値のある本であること、そして自分が翻訳を任せるのにふさわしい人であることをお伝えしましょう。
ファーストコンタクトにはエネルギーが要るものですが、このサンプルが少しでも壁を乗り越えるサポートになればうれしいです。
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