TRANSLATION

第255回 献本って、どうするの?

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

新しい年になり、「今年こそは」と気持ちを新たにされている方も多いことでしょう。出版翻訳家デビューを実現するための応援を、今年も引き続きお届けしていきます。

夢をかなえるためには日々コツコツと取り組むことも大切ですが、夢がかなった状態をありありと思い描くことも欠かせません。アスリートのイメージトレーニングではありませんが、既に出版が決まったとイメージすることで、そうなるのが当然だと思えるようになってきます。

出版後に書店で自分の本が並んでいるのを見に行ったり、友人に報告したり、PRのためにイベントをしたり……そんな様子を思い描くことが力になってくれるのです。

そこで、今回の連載では、献本についてお伝えします。出版後にやらなくてはいけないことのひとつが、献本です。出版するまでにお世話になった方に「おかげさまで無事に本が出来上がりました」という報告をしたり、本を宣伝してくれそうな方に「こんな本が出版されるので宣伝してくださいね」という依頼をしたりするために、本をお送りするのです。

できれば手渡しをして直接お願いするのがいちばんいいのですが、難しい場合は送付状を添えてお送りします。そこに書くのは次のようなことです。

・時候の挨拶
・出版の報告
・本の内容紹介
・紹介してもらいたい旨の依頼

この書き方ひとつによっても、相手の反応が変わってきます。メディア関係者など、仕事柄、多くの献本を受ける立場の方は、「ああ、献本ね」と「よくあること」として流してしまうので、一つひとつにきちんと目を留めてくれるとは限りません。持ち込みの際に編集者さんの目に留まるように企画書を書くことが重要なのと同じで、ここでもやはり相手の目に留まるような送付状にしなくてはいけないのです。

私も日本読書療法学会の仕事の関係で、多くの献本をいただく機会があります。その中で目を引く送付状はやはりありますし、そういうものは真似させていただいています。そのポイントをお伝えします。

手書きのメッセージがある
一律の文面でも、一人ひとりに宛てて何か一言書いてあると、やはり個人に送ってくれたという感覚になります。そういう対応をしてくださる方は、万年筆の文字色が珍しい色味だったり、筆記具にもこだわりがあるのが感じられて、そういう点でも目を引きます。

文章が読みものとして面白い
機械的な内容紹介ではなく、その人独自の言葉で綴られているので、読み流さずにきちんと読もうという気になります。

紹介しやすいように配慮がされている
送ってもらった本を読んで、自分なりに紹介文を考えるのは労力がかかります。紹介しやすいように、「どういう本なのか」「どこを紹介してほしいのか」などをそのまま使えるような文章でまとめてあったり、紹介サイトやQRコードを掲載してあったりします。ビジネス書の場合であれば、具体的にこのタイミングで購入してほしいなどのリクエストがあったり、紹介してくれた方への特典があったりします。

出版した際の参考にしていただければと思います。たとえまだ企画が通っていなくても、出版後にどこに献本しようか、今からぜひ考えてイメージを膨らませてみてくださいね。そして、しっかり動いていきましょう!

※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。

※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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