第249回 ChatGPTは出版翻訳企画の持ち込みに使えるの?②
ChatGPTは出版翻訳企画の持ち込みに使えるのかを検証しています。ある程度役立ちそうな感触が得られたところで、ChatGPTからの提案の精度をもっと上げるために、こんな指定をしました。
「あなたは数々のベストセラーを手がけてきた有能な出版プロデューサーです。出版プロデューサーの立場からアドバイスをお願いします」
まず、ChatGPT-3.5からは、こんな回答が返ってきました(冒頭部分がおかしな日本語になっていますが、そのまま掲載します)。
“ありがとうございますが、私は実際にベストセラーを手がけたプロデューサーではありません。ただし、出版業界に関する一般的なアドバイスを提供できます。
多様性を重視する出版社:
多様性をテーマにした作品を探している場合、その価値観に共感する出版社を選ぶことが重要です。多様性や包括性に力を入れている出版社が、あなたの作品に興味を持ちやすいでしょう。
市場ニーズを考慮する:
日本の出版市場でどのようなトレンドや需要があるかを理解することも重要です。子供向けの絵本市場で成功するためには、現地の読者の好みや関心に合致する要素を取り入れると良いでしょう。
出版社のポートフォリオを確認する:
出版社のポートフォリオや既刊作品を確認し、それらがどのようなテーマ性やスタイルを持っているかを調査します。これによって、自分の作品がその出版社に適しているかどうかを判断できます。
プロフェッショナルな提案を用意する:
出版プロデューサーに提案を行う際には、プロフェッショナルな形でまとめましょう。内容の要約だけでなく、なぜこの作品が重要で、どのような読者に向けているのかを明確に伝えることが大切です。
エージェントを検討する:
出版プロセスが初めての場合や、地元の文化やルールに馴染みがない場合は、プロのエージェントを検討することも一つの選択肢です。エージェントは経験豊富で、交渉や契約の面で助けになることがあります。
具体的な出版社の選定に関しては、上述のように福音館書店、偕成社、ポプラ社などが考慮されるかもしれませんが、最終的には各出版社の方針や要件を確認し、あなたの作品が最も適していると感じる出版社を選ぶことが重要です。”
一般論の回答ではありますが、出版社側の視点を提示してくれているので、自分の思いだけで企画をつくってしまうことを防ぐのに役立ちそうです。前回の内容とあわせて参考にすれば、ある程度しっかりした企画書はできそうですね。
続いて、ChatGPT-4を搭載したBingに同じ指定をしたところ、途中までは前回とまったく同じ回答が出てきたので、「あれ? 使えないのかしら?」と思ったのですが、後半部分で新しく登場した内容がありました。
“出版プロデューサーとしてのアドバイスとしては、以下の点に注意してください。
• 出版社の方針や傾向を調べる:出版社によっては、特定のジャンルやテーマにこだわっているところもあります。あなたの翻訳したい本が出版社の方針や傾向に合っているかどうかを事前に調べておくと、無駄な時間や労力を省くことができます。
• 出版社に問い合わせる:出版社に持ち込む前に、まずは電話やメールで問い合わせてみるといいでしょう。出版社の担当者にあなたの翻訳したい本の内容や魅力を簡潔に伝えて、興味を持ってもらうことが大切です。また、出版社の応対や対応の様子から、出版社の雰囲気や信頼度を感じ取ることもできます。
• 出版社に提出する資料を準備する:出版社に持ち込む際には、以下の資料を準備しておくといいでしょう。
o 翻訳原稿:あなたの翻訳した本の全文を印刷したものです。できるだけ清書して、誤字や脱字がないように注意してください。また、翻訳原稿には、あなたの氏名や連絡先を記入しておきましょう。
o 翻訳者紹介文:あなた自身の経歴や実績、翻訳したい本に対する思いや意図などを書いたものです。出版社の担当者にあなたの人柄や翻訳スキルをアピールすることができます。
o 原書の写し:翻訳したい本の原書の表紙や目次、本文の一部などをコピーしたものです。出版社の担当者に原書の内容や雰囲気を伝えることができます。もし、原書の著者や出版社から翻訳の許可を得ている場合は、その証明書も添付しておきましょう。
私はあなたの翻訳したい本が日本で出版されることを願っています。頑張ってくださいね😊”
この連載でお伝えしていることにも通じる内容が出てきました。準備しなければいけない資料などの情報が役立つとはいえ、やはりまだ一般論です。
これには、出版プロデューサーという指定も関係しているのでしょう。弁護士や税理士など、ある程度数が多く情報量も多い職業であれば、もっと細かいアドバイスも出てくるのではないでしょうか。出版業界の場合、特に持ち込みに関しては、あまり情報がないために限界があるのかもしれません。
それにしても、もう少し踏み込んだ提案が欲しいところです。そこで、「これまでに以下の出版社にすでに打診しています。系統の近い出版社の候補をお願いします」とリクエストして、実際に持ち込んだ出版社を複数社挙げてみました。すると……次回に続きます!
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