第246回 祝・企画通過! 出版翻訳家デビューサポート企画レポート53
出版翻訳家デビューサポート企画レポートをお届けします。今回登場するのは、社会派の長編小説を手がけるKさんです。
Kさんにはもうひとつ、自己啓発書の企画がありました。アップデートした企画書と試訳を私のほうでお預かりし、Z社の編集者さんにご検討をお願いしました。
その後、しばらくご連絡がありませんでした。ただ、以前に別件でお断りのお返事があった時には比較的早くお返事をいただいたので、ご検討を進めていただけているのではないかと、いい兆候として捉えていました。
その間、日経新聞の書評欄で、この分野の書籍が好調との記事が載っていました。翻訳書の場合、原書よりも遅れてブームがやってくることが多いのですが、まさにそのパターンです。追い風が吹いているのを感じました。
この記事をZ社の編集者さんにお送りするかどうか迷いましたが、控えておきました。当然目を通しておられるだろうから、かえってしつこく感じられるかもしれないと思ったためです。このあたりの判断は、掲載媒体や編集者さんのタイプによって分かれるところです。
もし、記事が掲載されたのがすごくニッチな媒体で、編集者さんが情報を入手している可能性が低ければ、お知らせしたほうがいいでしょう。だけど日経新聞の記事であれば、基本的な情報としてすでに入手済みと考えられます。
また、Z社の方はベテラン編集者さんなのでお送りしませんでしたが、編集者さんの手がけるジャンルやその方の情報感度によっては、こちらからの働きかけが必要になります。お送りしないと認知されないこともあり得るので、その場合はお送りすることになります。
というわけで、追い風は感じながらも、働きかけはせずにそのまま待っていました。そして3か月ほど経った頃……編集者さんから、企画通過のご連絡があったのです! 権利者にオファーを出し、すでに許諾も得られたとのこと。切り口が面白く、興味深いと社内の会議で評価を得られたようです。
見事、企画通過されたKさん、おめでとうございます!
企画通過の要因としては、Kさんの企画書や試訳の完成度の高さはもちろんですが、タイミングとマッチングがやはり大きかったように感じます。当初、翻訳会社の企画提案窓口に応募した際には出版に至らなかったのは、まだ本書のテーマに日本での関心が高まっていなかったからでしょう。今ならきっと反応も違うはずです。ふさわしい時期が来るまで温めて、ここぞというタイミングで企画を出されたKさん。日頃から新聞の書評欄などに目を通し、着実に情報収集をされていることが、こういう時にものをいうのだと思います。
複数の企画があると、進めていたのとは別の企画のほうがこうして動き出すことがありますし、それが他の企画にも勢いを与えてくれるものです。Kさんの長編小説のほうも、きっとまたいい形で動いていくことでしょう。そちらも楽しみにしたいと思います!
※Newsweek日本版にインタビュー記事を掲載していただいております。ご覧いただけたらうれしいです。
※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。
※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。