第245回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート52
出版翻訳家デビューサポート企画レポートをお届けします。今回登場するのは、社会派の長編小説を手がけるKさんです。
Kさんのもうひとつの企画は、小説ではなく自己啓発書でした。企画書をつくった当初、翻訳会社の企画書提案窓口に応募したそうです。窓口経由で2社が興味を示してくれたものの、採用には至りませんでした。当時よりも本書のテーマが日本で話題になることが増えているため、企画の鮮度は落ちていないとKさんは考えていました。
たしかに、このテーマは最近見かけることが増えたように私も感じますし、内容もおもしろそうです。Z社のラインナップに合うように思い、ご紹介できることをKさんにお伝えしました。Kさんが気になったのは、検討にかかる時間のことです。長くかかるようなら、Z社に出すよりも著作権エージェントに出すほうがいいのかもしれません。これまでの経験から、比較的早くお返事がいただけると見込めたので、その旨をお伝えしました。
どちらに出すにしても、少し前につくった企画書のため、アップデートが必要になります。また、8枚と長めのため、Kさんには2枚以内にまとめていただくことにしました。こういう場合、ご関心を持っていただけた時に参照できるように、企画書とは別に補足情報として用意する分には長くても大丈夫です。
Kさんは考えた結果、長編小説の企画のほうは著作権エージェントに出すことにしました。社交辞令に終わってしまうかもしれないけれど、その時はその時、またこれまでの地道な持ち込み活動を続けるだけだと割り切ることにしたのです。
一方、自己啓発書のほうの企画は、アップデートして2枚に収め、Z社に出すことにしました。試訳には、第1章の中から部分的に3箇所を抜粋して用意しました。私が一式お預かりして、Z社の編集者さんに打診することになりました。
著作権エージェントの方からはすぐにお返事がありました。企画書に目を通してくださったのですが、このエージェントでは日本語翻訳権を扱えないとのこと。原書の翻訳権をコントロールしている現地のエージェントがあり、その日本での窓口は別の著作権エージェントになってしまうというのです。なので、そちらにご相談いただいたほうがいいとのお返事でした。
残念なお返事ではありますが、本来は出版社にしか対応しない著作権エージェントの方が企画書を読んでくださっただけでも貴重なことです。窓口を教えてくださったこととあわせ、Kさんは感謝の気持ちをお伝えしました。今後また別の企画が出てきた際にはぜひご相談申し上げたいことと、翻訳者が必要な際にはお声がけいただきたい旨を申し添えました。
日本での窓口の著作権エージェントはわかったものの、伝手はありません。アプローチしてみたほうがいいのか、それともこれまでのように出版社に個別に持ち込みをしていくほうがいいのか、Kさんからご相談がありました。
こちらの著作権エージェントは、個人からのお問い合わせには対応していない旨を公式サイトに明記しています。差し障りがなければ、Kさんの在籍されている会社の名前を使えないかを提案しました。また、講座も主催されているようなので、受講してみることも考えられます。時間はかかりますが、スタッフの方や先生とのつながりができるでしょう。
あとはやはり、持ち込みを続けることでしょう。私がご紹介できそうなD社の名前をお伝えしました。かなり前ですが、Kさんの原書とテーマの通じる書籍を刊行しています。
Kさんは、会社の名前を出すのは控えておきたいとのこと。ただ、講座には少し前から興味があったので、受講を検討してみることにしました。また、D社刊行の書籍はたしかにとても近い内容に思われるので、とりあえず本書を読んでみることになりました。
一方、自己啓発書のほうはというと……次回に続きます!
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