第238回 翻訳絵本の持ち込みプロセスを公開します③
F社からのお返事は、お断りでした。編集会議で検討した結果、絵本のテーマは時流に合っているし、絵柄も非常に癒されるという意見もあったものの、F社としてはじめて絵本の棚で売る絵本としては難しいという結論でした。
結果は残念でしたが、ていねいなご対応にF社のファンになり、その後も刊行作品を楽しみにチェックするようになりました。
続いての候補はG社です。知人の編集者さんがいたことと、刊行作品のラインナップにテーマが合っていたことから選びました。企画書をお送りしたい旨をその編集者さんにメールでお伝えしたのですが、お返事はありませんでした。別件で問い合わせていた企画もあり、あまり煩わせてそちらに差し障りが出てもいけないと思い、深追いはせずに次に行くことにしました。
次に選んだのはH社です。以前に読んだ刊行作品が印象深かったことから、気になっていた出版社です。調べてみると絵本も刊行していたので、取り寄せて読んでみました。日本では珍しいタイプの絵本でしたので、かなり幅広い作品に対応している印象を受けました。
そこで絵本の感想とともにお問い合わせ窓口からご連絡してみました。すぐにお返事があり、企画書を送ってほしいとのこと。もちろん、早速お送りしました。
2週間ほどでご連絡がありましたが、お断りでした。企画会議で検討し、興味を持って担当したいという編集者さんがいれば企画通過となるようですが、残念ながら手を挙げた編集者さんはいなかったとのことです。
この時点で昨年の夏になっていました。次に持ち込むところが思い浮かばずにいると、ちょうどいいタイミングで、絵本に詳しい友人がI社のことを教えてくれました。刊行作品のリストを見せてくれて、私に合うのではとおすすめしてくれたのです。
たしかに合いそうなラインナップでしたので、最新刊の絵本を読んでみました。その内容からも、他の刊行作品の概要からも、テーマ性のある作品を積極的に刊行されている印象を受けました。
そこで友人が紹介してくれた編集者さんにご連絡を差し上げて、刊行作品の感想をお伝えするとともに、企画を見ていただきたい旨を打診しました。そのこと自体は喜んでくださったものの、零細企業であるため持ち込みへの対応は難しいとの理由で見ていただくことはかないませんでした。
ここまでは次々に持ち込みを続けていましたが、9社からのお断りを受け、次が見つからずに停滞してしまいました。他にまとめたい原稿もあったので、少し持ち込みをお休みして充電期間に入ります。
とはいえあきらめる気はさらさらなく、「次はいよいよ10社目だなあ……2桁の大台に乗るなあ」などと思っていました。
そんな中、以前に聞いたJ社のことが思い浮かびます。持ち込みを受け付けている旨を知った当初はJ社をよく知らなかったのですが、その後書店でJ社の刊行本コーナーを見る機会があったり、以前に読んでよかった本がJ社から刊行されていることに気づいたりして、自分の中での認知度が上がっていたのです。
そこであらためてJ社の公式サイトを確認して、刊行作品を何冊か読んでみました。日本で好まれる絵本の絵柄は限られてしまうのですが、J社から刊行されている作品は画風も幅広いように見受けられました。また、中にはかなりシュールな作品もあり、許容範囲が広い印象を受けました。
これならいけるかもしれない、とお問い合わせ欄からご連絡をしてみたのが今年の1月のことです。すると……次回に続きます!
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