第236回 翻訳絵本の持ち込みプロセスを公開します①
持ち込みを続けている翻訳絵本の企画があります。自分が書くほうの企画はあっさり通ったというのに、こちらは現在13社目。4年越しで実現した企画のように、企画通過後にレポートするつもりでいたのですが、実現する頃には経緯を忘れてしまいそうです(笑)
というわけで、持ち込み中の企画についてお伝えしていきます。どんなふうに持ち込み先を選んだか、どんなお返事を受けて次に進んだかなど、ご参考にしていただけたらと思っています。
どんな原書なのか、どうやって見つけて、出版翻訳することを決めたのかについては「原書の検討プロセス①」で詳しく書いていますので、ご覧くださいね。
コロナ禍で在宅時間が増えた際に持ち込みの準備を始め、2020年5月頃には企画書と試訳をまずはA社に持ち込みました。A社を選んだ理由は、知人の編集者さんがいたのと、本書のテーマがA社のラインナップにも合うと考えたからです。
通常はまとめて複数の企画を提案することはNGとお伝えしていますが、この編集者さんとは以前から長いお付き合いがあったので、他の絵本企画とまとめて4件ご提案しました。
6月末にはお返事がありましたが、残念ながらお断りでした。ひとつくらいは企画が通るのではと正直思っていましたが、すべてお断りのお返事です。テーマは興味深いと言っていただけたものの、刊行作品を厳選しているとのことでした。
その後、『翻訳家になるための7つのステップ』の出版もあり、少し間が空きます。
次の持ち込み先を探し始めた頃、知人の編集者さんからB社の話を聞きました。翻訳部門をこれから拡充して、絵本や児童書をもっと扱っていきたいと考えているという内容です。B社はベストセラー作品を多数刊行しているので、経営にも余裕があるはず。持ち込み企画も積極的に検討していただけるかもしれません。
そこで、知人からB社の出版部長さんにつないでいただき、企画をお送りしたい旨のメールを差し上げました。これが9月頃のことですが、お返事はなく……。リマインドをしても、ご連絡はありませんでした。知人の紹介でもご連絡がないということは、企画にご関心がないかご多忙なのか、いずれかだろうと考え、次を探すことにしました。
次に選んだのはC社です。たまたま、C社の編集者さんがおすすめの原書を紹介した映像を目にする機会があったのです。その選書から、テーマや絵柄の好みなどに、私の企画と通じるものを感じました。その編集者さんが手がけられた作品に目を通し、ますますその思いを強くします。そこで、その旨をお伝えしてC社のお問い合わせ窓口から編集者さん宛てにご連絡しました。
すぐにお返事があり、絵本は販路や営業上の理由からほとんど刊行できていないものの、企画書は見てくださるとのこと。そこで早速お送りし、ご検討いただいたのですが、造本なども含めて難しいというご判断でした。この時点で2020年11月になっていました。
次に選んだのはD社です。ある翻訳家の方への興味からその方の作品を複数読んでいたところ、D社刊行の翻訳絵本の中に、私の企画と通じるものを見つけたのです。絵柄や色彩、テーマなど、「こういう作品を扱っているなら、気に入っていただけるのでは?」と思いました。翻訳家の方の対談集にこの絵本の担当編集者さんのエピソードを見つけ、お名前がわかったので、その方宛てに企画書を郵送しました。
編集者さんへのお手紙には直筆で、どのような経緯でご連絡を差し上げることになったのか、どうして担当していただきたいと思ったのか、手がけられた作品への感想などを綴ってお送りしました。
ところが……次回に続きます!
※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。
※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。