第235回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート㊿
出版翻訳家デビューサポート企画レポートをお届けします。今回登場するのは、専門的なメソッドを子ども向けに解説した絵本を選んだ、アメリカ在住のHさんです。
私がご紹介した出版社のうち、HさんはC社に問い合わせをしてみたとのこと。刊行作品の中にHさんの選んだ原書に通じる絵本があり、おすすめしたところです。Hさんはアメリカ在住のためすぐにその絵本を読むことはできなかったのですが、概要を見て納得し、企画書をお送りしたい旨のメールを送ってみたそうです。
ところがお返事がないまま3か月が過ぎたため、再度ご連絡をしてみました。けれどもそれから3か月経ってもまだお返事はなく、企画書をお送りすることはできていないそうです。
一方で、持ち込み企画をオープンに募集しているD社に、Hさんは企画書と試訳を送ってみました。ここは個別にご連絡をいただけるわけではなく、1か月以内にお返事がない場合はお断りということだそうです。
1か月経ってもお返事はなかったのでお断りと判断し、次にE社に問い合わせてみたものの、E社は新しい翻訳書は出していないということでした。
進捗が停滞気味というHさん。そこで、ZOOMでミーティングをすることにしました。
その際、私のほうで「Hさんの企画の内容や絵柄の雰囲気からすると、このあたりの出版社だと可能性があるのでは?」と思った6社をご紹介しました。いずれもオープンに企画募集をしているわけではありませんが、お問い合わせ窓口からご連絡できるので、持ち込み可能と判断しています。
Hさんは、それぞれの出版社に興味をお持ちでした。というのも、各社で刊行されていた絵本は、Hさんがアメリカの図書館で原書をチェックしていたものだったからです。Hさんは2週間に1回図書館に行って、その都度15冊ほど絵本を借りて読んでいるとのこと。その中で出逢っていた素敵な絵本の日本語版が、ご紹介した出版社から刊行されていることを知って喜んでおられました。
これらの6社のうち、どこに持ち込むかを相談しました。新しくアプローチする前に、C社に再度リマインドすることも考えられます。その際にはC社から刊行された絵本についてさらに熱く思いを伝えるなど、これまで以上に目を引く方法が必要になるでしょう。ただ、これまでの様子からすると、保留にしておいたほうがよさそうに感じました。また、アプローチするとしても、C社から出版している私の知人の方を通してお願いするほうがよさそうです。とはいえ「その方にお願いしてよいものか」という逡巡があり……。何十社も断られてからであればお力をお借りするのもありかもと思い、最後の手段に取っておくことにしました。
まずは6社のうち、Hさんが特に気になったところを挙げてもらいました。その中から、刊行作品の絵柄やメッセージ性に照らして、Hさんの企画によく合いそうなF社にアプローチすることに決まりました。
しばらく停滞していたというHさんですが、「自分の中の持ち込みのリズムをキープするのが難しくて、淀みがあったけれども、持ち込みの川にまた戻っていける」とのことでした。「暗闇に矢を打つような思いだったけれど、真理子さんには星が見えている」とも……。Hさんの詩的な表現が印象的でした。
もうひとつ印象的だったのは、本に対するHさんの思いです。本は、「作者の外へ外へと波紋のように広がっていく」もので、「メッセージをギフトボックスに包むようにして」読者に何かを受け取ってもらえたら……という思いがあるそうです。
持ち込みを続けていくプロセスでうまくいかなくなると、どうしても心折れてしまいそうになりますよね。だけど本に対するこのような思いがある限り、きっと形にしていけることでしょう。
引き続きレポートしていきますね!
※「なぜ、読書で『自己肯定感』が高まるのか?」というインタビュー記事が掲載されています。この連載の読者の方々にもご参考になる内容かと思いますので、ぜひご覧になってみてくださいね。
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