第230回 祝・企画通過! 出版翻訳家デビューサポート企画レポート㊾
Aさんに引き続き、またしてもうれしいご報告ができる日がやってきました。Sさんの企画が通り、出版が決まりました!
第1段階の会議を通過後、日本で出版する意義を詳しく説明する文章を用意していたSさん。編集者さんのイメージとの大きなずれや内容の不足があった場合に修正できるように、がんばって早めに提出されたそうです。その甲斐あって、予定していたよりも早く、第2段階の会議に出すことができました。
第1段階の会議では、全体的に好感触だったそうです。Sさんにとっては予想していなかった反応もあり、どんなところに関心を持っていただけるかを考えるために読者目線になることの難しさと、その分の面白さも感じたとのこと。
第2段階の会議もこの流れですんなりいくかと思いきや、世代によって反応が分かれたほか、一般読者に届けるために工夫が必要な点について、営業部からの意見を中心に議論があったそうです。それでも最終的には、挑戦する価値と可能性が認められ、無事に通過することができました!
第2段階の会議に先立ち、Sさんは著者の方に頼んで原書を送付してもらい、編集者さんにお送りしていました。図なども多く載っているため、会議で原書を実際に見せて活用していただけたそうです。こういう入念な準備も功を奏したのでしょう。
企画通過の喜びをしみじみかみしめているというSさん、本当におめでとうございます!
最初にアプローチした出版社で企画通過という結果になったので、表面的なところだけ見ると、随分とラッキーに思えるかもしれません。だけど、このデビューサポート企画に応募していただく前にも、Sさんはご自身で出版社にアプローチをしてみるなど、試行錯誤を重ねてこられたんですよね。
また、準備を怠らなかったことも大きいと思います。というのも、Sさんの選んだ原書に他の出版社からもお問い合わせがあったそうです。Sさんとしては心配になるところですが、著者の方が原書の出版社に、「Sさんのやり取りをしている出版社にするのがよいと思う」と明確に伝えてくださり、編集者さんとの話し合いでも「問題ない」という判断になりました。著者の方との人間関係をつくるところも含め、ていねいに進めてこられたからこそ、安心していられるのだと思います。
今回うまくいった理由としては、もともとの選書の内容が興味深いものだったというのがまず挙げられると思います。さらに、日本で近い分野の活動をされている著者の方がいて読者層が見込めたことや、その著者の方にうまくつながっていったことも挙げられるでしょう。
ただ、そういう条件が揃っても、それで出版が決まるというものでもないんですよね。やはり運の要素も大きいですし、マッチングの問題なので、いくらいい条件が揃っていても、なかなか決まらないこともあるのです。Sさんの場合も、10社目くらいで決まった可能性もありますし、もっと先だったかもしれません。それでもめげずに次に向かえるかどうかだと思います。
1社目での企画通過は幸運と言えますが、Sさんは与えられた幸運に溺れるタイプではなく、むしろそれを少しでも活かして恩送りをしていこうという謙虚さを持った方です。きっと読者にいい作品を届けるために力を尽くしてくれるでしょう。楽しみですね!
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