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第227回 まとめて提案してもいいの?

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

複数の持ち込み企画を準備していて、「全部まとめて提案したい!」という方もいらっしゃるかもしれません。そういう場合、まとめて提案してもいいものでしょうか?

基本的には、まとめて提案することはおすすめしません。1回の持ち込みにはひとつの企画に絞ったほうがいいでしょう。

「複数あるほうが、どれかひとつでも企画が通る確率が高くなるのでは?」と期待してしまうのかもしれません。だけど複数あると、一つひとつの印象が薄くなってしまうものです。「私が推したいのは、これ!」と一球入魂のほうが出版社にとっても検討しやすいのです。

ひとつの作品の企画書を用意するだけでも大変な労力が必要ですから、それを複数用意できたというのは、素晴らしいことだと思います。ただ、気をつけてほしいのは、そのために一つひとつの企画の精度が落ちてしまっていないかということです。たとえば5作品分用意したとして、それぞれに100%の力を注げたのならいいのですが、ひとつの作品に20%の力しか注げなかったのではもったいないですよね。

また、持ち込み先をしっかり検討できているのかも確認が必要でしょう。企画書をつくった時点で力を使い果たして、十分に検討しないまままとめて送ってしまっていませんか。

作品がどれも同じテーマを扱っていて、どの作品にも最適な出版社がたまたま同じだったという場合もあるかもしれません。あるいは、作品の傾向はばらばらだしジャンルも違うけれど、幅広いラインナップを刊行している出版社で、いずれの作品の類書もそこから刊行されていたという場合もあるかもしれません。

だけどたいていの場合には、それぞれの作品ごとに最適な持ち込み先があるはずです。企画書をつくるところだけでなく、持ち込み先を吟味するのにも、手間をかけてほしいと思うのです。

もちろん、何事にも例外はありますし、私も複数まとめて提案したことはあります。ただ、それはすでに編集者さんとの関係性があって、「この中でご興味がある作品があれば」というスタンスだったからです。はじめて持ち込む場合とは事情が違っていました。

持ち込みのプロセスが進んで編集者さんとお会いできる段階になって、「もしかして他の企画にもお話が広がりそうだったら……」と思って、いわば隠し玉のようにして持参することもあります。

だけど実際には、あまりそちらを披露する機会はありません。提案中の企画についていい感触でお話が進んだ場合は特に、あえて触れないようにしています。せっかくその企画に興味を持っていただけて気持ちがそちらに傾いているのに、それをそぐことになってしまうからです。

もし提案するとしたら、企画が通って出版のための一連の作業が進み、自分の仕事も編集者さんのお仕事も手離れしてお互いに落ち着いた頃、あるいは発売後の慌ただしさが過ぎてひと息ついた頃、というタイミングになると思います。

せっかくの企画ですから、用意するところまでで力尽きてしまうことなく、実際の出版に至るまで、しっかりフォローしていきましょうね。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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