第226回 4年越しの企画がついに実現!⑥
お力添えいただいた方を通しての持ち込みは計6社全滅でしたが、その結果報告のメールに、「Aさんのところでお出しになれないのですか?」とあったのです。このメールはAさんにもCCされていました。
Aさんのところは出版社でもありますが、メインは編集プロダクションです。だからAさんに編集をしてもらうつもりではいたものの、Aさんのところから出すことは考えていませんでした。また、Aさんのほうも、自社で出すよりも人文系に強い出版社から出すほうが広く読者を獲得できると考えていました。
それが、このメールを受けて、「もしかしたら自社で出版できるかも?」と、方法を考えてみてくれることになったのです。そして思いついたのが、「自社から発行している介護情報誌に連載する」という方法です。そうすれば連載期間を通して読者を獲得していけるので、連載の書籍化として出版することで、一定の売り上げが見込めます。
「なるほど、そういう手があったか!」と思いましたし、この方法は出版翻訳家を目指す読者にも応用できるのではないかと考えています。絵本などでは無理でしょうが、人文系の書籍や専門的な内容の書籍であれば、翻訳家もその分野を自分で研究していることが多いでしょう。そういう場合、海外の事例の紹介という形で専門誌に連載を提案し、そこから書籍化を目指してもいいのかもしれません。
コロナ禍の大変だった時期を経て、介護現場にも多少余裕が生まれてきたことや、最近になって介護系の雑誌で性の特集が組まれるなど、関心が高まってきたことも、連載開始の追い風になりました。
一定期間連載をしたうえで書籍化するという方針が決まり、具体化に向けて動き出しました。さらに、Aさんの会社のスタッフDさんが内容に興味を持ってくださり、「そうやってよそが出さないような本こそ、うちから出すべきなのでは?」という思いから、特集を組むことを提案してくださいました。まずは特集号で大きく取り上げて問題提起をし、そこから連載につなげていこうというのです。
そこで、Dさんの企画を基に、どんな特集にするかの打ち合わせを5月初旬に行いました。原書の内容紹介はもちろんのこと、私がなぜ本書を日本に紹介したいと思ったのか、私がやってきたパーソンセンタードケアの活動と本書がどうつながるのかといった記事も掲載されます。
原書の紹介部分については、第1章の冒頭から途中までを掲載するというご提案でしたが、それよりも事例を中心に紹介していくほうが読者の関心と重なるのではないかと考えました。第1章の中から強く印象に残った事例を3つピックアップし、事例紹介に翻訳家の立場から日本の介護現場の状況に合わせて解説を加えることにしました。
この介護情報誌は私も読者として長年購読していますし、連載をさせていただいていたこともありますが、一冊丸ごと監修するのは初めてのことです。どうやったら読者に「こういうことって、うちの現場でもあるなあ」と自分事として捉えていただけるのか、さらには、特集号を通してこの情報誌自体の認知度を高めて購読者を増やしていけるのか……考え考え、執筆を進めてきました。
執筆にゲラの校正、インタビュー記事の確認、さらには特集号のPR用のインタビュー動画の撮影などなど……5月以降はかなりかかりきりになっていました。ひとまず山場は越えましたが、今月末の最終確認までまだまだ気は抜けません。また追って随時、レポートしていきますね!
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