第225回 4年越しの企画がついに実現!⑤
企画書と試訳をお送りし、「お忙しいだろうから、1か月くらい待ってお返事があればラッキー」と思っていたら、すぐにお返事がありました。
お力添えいただきたい旨をお願いしていたので、「具体的には何をしたらよいのでしょう?」とのお尋ねがありました。そこで、出版社のご紹介と、可能であれば解説や序文を書いていただきたいことをお伝えしました。翻訳書の場合に生じる読者との距離を埋めて橋渡しをしてほしいというのがひとつの理由です。さらに、解説などでご協力いただけると企画が通りやすいというのがもうひとつの理由です。理由とともに要望をお伝えすると……
「ずいぶん欲張りですね」と言われてしまいました(笑)。
ごもっともです……。それでも数社に当たってくださることになったので、欲張ってみるものですね。遠慮してしまう方が多いのですが、何を望んでいるかはお伝えしないとわからないものなので、たとえ欲張りと思われようとあつかましいと思われようと、お伝えしたほうがいいのです。
「あつかましい人間だと思われたくない」という理由で行動にストップがかかってしまう方もいるでしょうし、その気持ちもわかります。だけど「あつかましい人間である」ことと「目的のためにあつかましい行動をとる」ことは、私の中では別なので、後者に躊躇はないのです。人から見ればどちらも同じに見なされてしまうとしても、それはそれでいいと思っています。
というわけで、早速企画書にもその方がご協力くださることを盛り込んで、あつかましさを発揮して一式をお預けしました。
それから3週間ほどして、ご連絡がありました。3社に検討を依頼したものの、3社ともお断りだったそうです。そのうちの1社はトップクラスの意思決定ができる方にコンタクトされたそうですが、それもお断りだったとのこと。
その方が推して関わってくれる本であれば、出版社にとっても魅力的な提案だと思うのですが……それでもお断りというお返事に、翻訳書をめぐる出版状況が本当に厳しくなってきたことを感じました。
強力な切り札でもダメということで、あきらめて次の一手をまた考えようと思い、お礼のお返事を書いていたら……なんと、さらに3社に当たってくださるとのご連絡がありました。
そしてお返事がない出版社には催促するなど、応援してくださったのですが、追加の3社も同様にお断りでした。
1社からのお返事の一部をシェアしていただいたところによると、刊行する意義は十分にあると認めていただけて、テーマとしてもとてもタイムリーだという評価だったものの、商業ベースに乗せて採算をとるのが難しいという判断でした。
計6社全滅でしたが、この時……次回に続きます!
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