第219回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート㊺
今回登場するのは、現役医師のYさんです。医療現場を舞台にした短編小説集を選んだYさんは、本書が必要とされる背景を説明するためにパワーポイントでプレゼン資料まで作成しました。編集者さんに資料をお送りしてすぐ、ご検討いただける旨のお返事がありました。
ところが、3か月ほど経っても、ご連絡がありません。リマインドをするべきかどうか、Yさんは悩みました。リマインドなしでご返信をいただけたことがなく、もしかしたら「断っていることに気づいてください」というメッセージなのかと感じるようになったのです。
「そろそろ自分から身を引かないと……」というYさんに、編集者さんが立て込んでいるだろうことをお伝えしつつ、なんだか恋愛相談に乗っているような気分になってきました。「彼から全然連絡がこないんだけど、もう別れようかな」「そんなに早まらないで。彼も仕事が忙しいんだと思うよ」というシチュエーションに、よく似ています。相手のことで頭がいっぱいになってしまう点では、もしかしたら恋愛に近いものがあるのかもしれませんね。
編集者さんはその時に手がけている本のことで常に忙しいものですし、予定外の案件については、どうしても対応に時間がかかってしまいます。悪気があるわけではなく、目の前のことに追われているうちにあっという間に時間が経ってしまっているというのが実情ではないでしょうか。
Yさんが働きかけている編集者さんは、とても誠実に対応してくださっているように見えました。リマインドが必要だったとはいえ、その都度きちんとお返事をくださっていたからです。その内容も、Yさんの主張をていねいに検討したうえでのアドバイスでした。そんな方ですから、もし本当に断るのであれば、理由とともにはっきり伝えてくださるでしょう。
そこで、Yさんには「身を引いてしまわないでください」とお願いしました(笑)。もう一度リマインドしたほうがいいと思ったのです。ただ、年度末の時期でしたので、先方がかなり慌ただしくされている可能性を考え、「まだですか? 待ってるんですけど」という相手を責めるニュアンスではなく、「年度末でお忙しいと思いますが」というニュアンスでリマインドするようにお伝えしました。
リマインドしてから2週間ほど経っても、まだお返事はありません。「2回目のリマインドを送るのは気が引けるのですが……」というYさんに、新年度の少し落ち着いたころに再度リマインドしてみること、その際には電話をしてみることもご提案しました。「後ほどお電話しますので、よろしくお願いします」と書き添えて、メールでのリマインドの後に電話をするのです。
ひとつのスキルとして、「鈍感な人を装うこと」もお伝えしました。「これは断られるのでは……」と内心思っていたとしても、断られるなんて微塵も思っていない態度でいると、相手がその雰囲気につられていきます。結果としていい方向に話が進むこともあるのです。
これまでのやり取りを通じてせっかく編集者さんとの関係性を築いてきたので、もう少し粘ってみることをおすすめしました。
すると、Yさんは……次回に続きます!
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