第216回 リマインドは朗報とともに
新年度になりましたね。新しい企画が立ち上がったり、新しい仕事が始まったりする時期です。何かを始めようというエネルギーが溢れるこの時期は、編集者さんにお預けした企画をリマインドするのにも適しています。
出版翻訳の企画を出版社に持ち込んだ後、悩ましいのがリマインドのタイミングです。早ければ1週間ほどでお返事をいただけることもありますが、たいていは長くかかります。出版業界の様子はなかなか外からはうかがい知れないものなので、持ち込み企画に反応がないと、「どうしてお返事がないんだろう」と悶々としてしまう方が多いのです。だけど、ここで編集者さんの立場に立って想像してみると、状況の捉え方も変わってくるのではないでしょうか。
編集者さんは、たいてい複数の企画を抱えているものです。そこにあなたが持ち込んだ企画があったとしましょう。「検討します」と言って預かったものの、社内での企画会議は終わったばかりでした。次回の企画会議は翌月です。そうすると検討結果が出るのは、早くても約1か月後になります。
ところが、1か月後の企画会議の際には、以前から抱えていた企画を提案しなければいけなかったので、あなたの企画は手つかずのまま終わってしまいました。翌月の企画会議に回すつもりでしたが、別の企画に関連した書籍が他社から発売され、そのテーマが流行りそうな気配を見せました。そこで、そちらを先に企画会議にかけることになり、あなたの企画はまた翌月に持ち越されます。……こういう具合に、数か月かかってしまうものなのです。
そんな事情も踏まえて、リマインドしていくといいでしょう。その際にどんな文面にすればいいのか悩む方が多いので、新しい話題を提供することなどをおすすめしています。その点、新年度が始まった時というのは、それ自体が新しい話題なので、あれこれ悩まずに済むのです。
「でも、そのタイミングを逃してしまったら? そういう時にしかリマインドできないの?」と不安になる方も、大丈夫です。GW明けもそうですし、新年度ほど大きな転換点ではなくても、仕切り直す気分になるタイミングというのは意外と多くあるものです。
覚えておいてほしいのは、リマインドする時に、何か明るいニュースと結びつけることです。かつて、戦に勝利した知らせを伝えた使者は酒池肉林の接待を受けたのに、敗北した知らせを伝えた使者はその場で殺されてしまったという話を聞いたことがあります。勝利も敗北も、その使者が左右できることではないのに……。たとえそれをわかっていても、出来事とその情報を伝えてきた人を、どこかで結びつけてしまう傾向が人間にはあるのでしょう。
だから、明るいニュースとともにリマインドすることで、編集者さんに好印象を残してほしいのです。実際、ちょっとしたことで、受け手の気持ちは変わります。「桜がきれいに咲き誇っています」というメールなら、企画も桜咲く合格を連想させますが、「桜の花も散ってしまいました」では、なんだか企画まで儚く散ってしまいそうです……。
企画が通るまではつい悪いほうに考えて落ち込んでしまいがちですので、明るいニュースを探すこと自体が、そんな時期のメンタルケアにもなってくれますよ。
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