第214回 お祝い会での話題から
週末に、出版翻訳家デビューサポート企画にご参加の方々とご一緒に、Aさんの企画通過お祝い会をオンラインで開催しました。これまで個別にZOOMミーティングをしてきましたが、一堂に会するのは初めてでしたので、感慨深かったです。それぞれに簡単に自己紹介をしていただいた後、Aさんから企画通過までの経緯を詳しくお話しいただきました。それを受けて、参加者からAさんへのご質問やコメントをいただき、あっという間の1時間でした。
そこで話題になったことの中から、読者の方々にもお伝えしておかなくてはと思ったことが3つあります。
①書誌情報
まず1つ目は、企画書に盛り込む内容についてです。この連載では、編集者さんに対面でお会いして企画を説明することを想定してきました。その際に原書をお持ちして、現物を直接お見せするため、企画書にはシンプルに原書名しか掲載していません。ところが、コロナ禍によって対面でお会いする機会が減り、企画書の時点で書誌情報を盛り込んでおくことが求められる場面が増えてきました。
そこで、「原書名」の代わりに「原書情報」として、以下の情報を盛り込むようにしてください。
原書名:○○○○○○
出版社:○○○○○○
刊行日:○○年○○月○○日
総ページ数:○○ページ
ISBN-10 : ○○○○○○ ISBN-13 : ○○○○○○
amazonなどのオンライン書店で原書を検索すれば取得できる情報ですので、問題なく見つけられるでしょう。
②シノプシス
2つ目は、シノプシスについてです。この連載では、ビジネス書や実用書、絵本から学術書や専門書など、あらゆるタイプの持ち込みを想定しているため、シノプシスには特に触れていません。ただ、小説の場合にはシノプシスが求められることがあります。企画書の内容に、登場人物やストーリーの流れ、読みどころなどを加えたものとお考えください。詳しい書き方については、「翻訳 シノプシス 書き方」などで検索すると情報が出ています。ここでもやはり、基本となるのは、編集者さんに「読んでみたい」と思っていただけるようにすること。そのためにはどう書けばいいか、逆算していくことです。
③音読の重要性
3つ目は、音読の重要性についてです。Aさんは、ご自身の翻訳を音読されたそうです。音読することで、すらすら読めないところに気づきました。てにをはが引っかかったり、強調のつもりで訳していたのが持って回った言い方になっていたりするのに気づくことができたのです。
絵本の場合は私も音読をおすすめしていますが、それ以外の翻訳の場合も、やはりAさんのように音読することは大切だとあらためて感じました。私は視覚重視で作業をすることが多く、「行をまたぐときにこの単語が途中で切れてしまうと美しくない」など、字面の見た目で手を入れていくことが多いのです。それももちろん大切なのですが、自分が翻訳した本を使って読書会をしていると、「ここはもっとすっきりさせたほうがよかった」と思うことが多々あって反省しきりで……音読ももっと取り入れなくてはと意識を新たにした次第です。
この3つは、ぜひご参考にしていただければと思います。
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