第185回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート㉗
E社の編集者さんにIさんの企画をお送りし、2週間ほどでお返事をいただきました。結果は……お断りでした。
評伝としても、歴史的な記録としても興味深い書籍と受け止めていただけたものの、出版路線とは合わないことが理由です。
E社はノンフィクションもラインナップにありますし、編集者さんの個人的なご関心とも重なります。営業力のある出版社なのでメインの路線でない作品でも販売の数字が見込めることもあり、正直なところ、「いけるのでは?」と思っていました。また、企画が通るかどうかは運の要素もありますが、編集者さんにお送りした時の諸々の出来事のタイミングから、いい流れに乗った感触がありました。それだけに、お断りには「あれれ?」という感じでした。
やりたい編集者さんがひとりでもいれば、その方が手がけるというタイプの出版社だったら、きっと通ったと思うのです。だけどE社は企画会議で決断するので、残念ながら通ることはかないませんでした。
こういう場合は……「これでますますこのドラマが盛り上がる!」と思うことです。
Iさんの企画はすぐに通っておかしくないようなレベルの高い企画ですが、だからといって、「いい企画だったので、すぐ通りました」では、おもしろくないですよね(笑)。「いい企画だったけど、通るまでにこんな困難がありました。でもそんなあれこれを乗り越えて、ついに通りました!」のほうが、ドラマがあります。それに、ドラマがあるほうが応援したくなるので、出版された時に本を買いたくなります(笑)。
私も、企画がうまく通らない時は、「出版されたら記念トークショーでこの話をしよう」などと思いながら、「よし、これでネタが増えたぞ」と気を取り直しています。
うまくいかない時に、そこにはまりこんでしまうと悲劇に思えてきてしまいますよね。だけど、絶対にうまくいくと決めていて、最終地点から逆算して眺めていると、ドラマ性のある通過点として見えるようになってきます。そのドラマを楽しみつつ、次に向かえるようになってくるんですね。
それに、Iさんの場合、お断りでも、持ち込み自体が営業につながっています。その都度編集者さんとつながりができているので、他の企画が出てきた場合に、これまでに比べて持ち込み先の候補が増えています。各社の書籍も読み込んできているので、持ち込みの精度も上がるでしょうし、下準備の時間も省けます。
特にE社に関しては、IさんがE社に関心を持っていることをお伝えしていたこともあり、今後もいい原書があればご紹介くださいと、持ち込み歓迎の旨のメッセージもいただいています。
出版された暁には、これまでお断りのあった編集者さんたちにも本をお送りして、「あの時ご検討いただいた企画が通って本になりました!」とお知らせすれば、本の宣伝をしつつ、次のお仕事の営業にもなるでしょう。
長い目で先々を見据えつつ、ロールプレイングゲームで仲間が増えていくような感覚で、まわりの方々を巻き込みながら、応援してくれる方々を増やしながら、しっかり進んでいきましょう。
Iさんも次に向けて動き出していますので、また追って進捗をお伝えしますね!
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