第179回 使いたい人脈、使いたくない人脈
企画書を出版社に持ち込む際、伝手をたどることをこの連載ではお伝えしています。そんな伝手なんかないと思っていても、探してみると、実際には結構見つかるものです。
出版翻訳家デビューサポート企画に応募してくれた方々とお話をしていく中で、すでに伝手はあるけれども、あえて頼ることを控えているケースも見受けられました。
考えてみると、私もあえて頼らないようにするケースがあります。そこで今回は使いたい人脈、使いたくない人脈について考えてみました。
私は人から見たら厚かましいお願いをすることも多いようなのですが、相手の方はたいてい、「引き受けること自体を喜んでくれる方」なのです。人のために何かをすること自体がその方にとっての報酬になっているというか、ギブアンドテイクのギブだけで完結していて、テイクを求めないのです。
もちろん、それに甘えるつもりはありませんし、きちんとお返しはします。だけど、私がお返しをすることは実際には求められていないのです。それよりも私が他の方に何かをして差し上げることを喜んでくださるような、そんな精神の持ち主なのです。だからお願いする際に私の気持ちの負担が少ないのだと思います。
逆に、「この方に頼めばうまくいくな」とわかっていても頼まない、頼りたくない人脈はというと、「がっつりギブアンドテイク」というタイプです。大きなテイクを求められそうな感じがすると、どうしても避けてしまいますね。
大きなテイクを求められても、そのテイクが自分にとって負担にならない場合もあります。それはあくまでも「自分にとって」という基準なので、人から見たら、「それだけのことを頼むのに、そんなに大変なことをしなければいけないのか」ということもあるかもしれません。でも、自分が楽しんでやれることだったり、好きでやれることだったりすると、苦にならないのです。だけどそのテイクの性質によっては、たいしたことではなくても、自分にとっては気が重くて、ものすごく負担に感じてしまうこともあります。
そういう理由から、ノリが違う方や、ペースが合わない方にも頼まないようにしています。たとえば、頻繁に連絡をとりたがるタイプの方だと、頼み事をしたのをきっかけに、しょっちゅう連絡があるだろうなと予想されます。私はできるだけ静かに何かを書いたり考えたりして過ごしたいと思っているので、そうして煩わされると、精神的な負担がすごく大きいんですね。また、会食が好きな方や、いろんな社交の場に顔を出すことを求められるケースも、避けるようにしています。
人によって何を負担に感じるかはそれぞれですので、自分は何が嫌なのかを見極めた上で、すでに伝手がある場合に、その伝手を頼るかどうかを検討していくといいかもしれませんね。
第163回でお伝えしたように、相手にとってご迷惑なのではと思って、遠慮してしまっていることもあるでしょう。自分の中で制約をかけしまっている場合は、本当にそうなのか、しっかり根拠を洗い直してみてください。不要な縛りであれば、解いていくことで道が拓けていくはずです。
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