第172回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート⑯
私のアドバイスを受け、A社の社長さんと窓口の方に企画をご提案したJさん。ところが、窓口の方から、自分にのみ送るようにしてほしいと注意をされてしまいます。A社としては、会社の業務フローが逆になってしまうからです。そこでJさんは、急いで電話やメールで謝罪をし、社長さんにも別途謝罪のご連絡をしました。私のアドバイスのために、お詫びをしなければいけない羽目になってしまったのです……!
気にしなくて大丈夫だとA社の方々は言ってくださったそうですが、こういう出来事があると、次に持ち込むのが怖くなってしまう方もいることでしょう。自分のことなら「てへぺろ」ですませてしまう私も、人のこととなるとさすがに申し訳なく思いました。
Jさんはきっと大丈夫だろうと思いつつもその旨お伝えすると、「多少はお叱りを受けるかもしれないなと思っておりましたので想定の範囲内です」と、私が思った以上に頼もしいお返事が返ってきました。さらに、「通常とは違うことをしないと前に進めないこともあるかもしれないので、やっぱりよかったと思っています!」と受け取っていたのです。
実際、その通りなんですよね。何も無理に変わったことをする必要はありませんが、「道がない」とか「これしか道はない」と言われてしまったときに、「本当にそうかな?ここにも道があるのでは?」「ちょっとデコボコした道だけど、ここも通れるのでは?」と何とかして方法を探る人には、道が見つかるのだと思います。
通常の提案をしていれば、窓口の方のところで止まったまま、社長さんに見ていただく機会はなかったかもしれません。だけど見てもらうことができたのは、結果的によかったと思います。こういう「逸脱」が悪い印象として残ってしまう場合もありますが、Jさんの場合は明るいキャラクターをお持ちなので、「はみ出してしまうくらい元気な面白い人」という形で印象に残るのではないでしょうか。よくない受け取り方をされるリスクをある程度負ってでも、コンタクトをとる機会をとにかく増やすことがデビューにつながるはずです。
A社からは、しばらくお返事がありませんでした。リマインドをしたところ、企画がつまっているので今回は見送らせてほしいとのことでした。
そこで、Jさんは早速次に動きます。B社に電話をして、企画書一式をメールで送りました。B社は絶版になった古典絵本を復刻したり、古典絵本を新たに発刊したりしているので、Jさんの企画ともマッチするのではないかと考えたそうです。たしかに、B社の方向性とJさんの企画は合っていますし、B社から刊行されることで、本書にふさわしい読者に届けられるのではと思います。
現在ご検討いただいているところですので、いいお返事があるのを期待しつつ、また動きがあったところでレポートしていきますね。
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