第170回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート⑭
今回ご紹介するのは、動物を主人公にした古典名作絵本を選んだJさんです。原書はストーリーも素敵で、70年以上前の作品でありながら絵柄もそのまま復刊されているほど古臭さがなく、どうしてこの作品がこれまで日本で出版されていないのか不思議に思いました。
試訳も1冊まるごと送っていただいたのですが、ふっくらとした児童文学の香りがする文章も絵柄によく合っていて、すでに完成されています。
Jさんの企画書は、プロフィールで翻訳に関する情報だけでなく、本書の主人公の動物にまつわるJさんの活動やSNSでの発信の様子も描かれ、人脈づくりにも積極的に励んでいる様子が伺えました。夢の実現に向け、がんばっていることが伝わってきます。それも必死になるのではなく、楽しそうに歩んでいる感じで、キラキラした印象を受けました。企画書で人柄を伝え、「この方にお会いしたい」という気持ちにさせることもできるのですね。
また、類書の分析をとても細かくされていました。主人公の動物の役割やキャラクター、そしてイラストのタッチなど多角的な観点から類書を挙げた上で違いを説いているのです。わかりやすいだけでなく、十分にリサーチをしてあることもアピールできますよね。「これはいいなあ」と早速私も自分の企画書に取り入れることにしました。「応募者に教わっていてどうする!」と思いつつ、「人間、素直さが大事よね。素直な人が伸びるのよ!」と自分を励ましておりました。伸びしろだったら負けません……。
とはいえJさんのようにリサーチするにはかなり時間もかかります。そこで、絵本に詳しい友人に「こういう動物が出てくる話を知ってる?」「こういうテーマの作品はある?」と訊くと、「これとこれとこれ」と教えてくれたので、そのままありがたく企画書に反映させていただきました。人間、素直さが大事ですからね……。
さて、実際にお話をさせていただいたJさんはとても明るい方で、情報も豊富。私のほうが「そんな出版社があるんですね~!」などと教えていただいてばかりでした(笑)。
Jさんはもともと『翻訳家になるための7つのステップ』の版元である雷鳥社さんのファンだったそうです。昨年末にイベントで雷鳥社さんが出展された際に出かけて本書を知り、その後雷鳥社さんのSNSでこの企画を知ったのです。
実は、Jさんは応募するかどうか悩んだそうです。私が認知症関連の翻訳を主に手がけているので、そちらの企画のほうが良いのではと思ったとのこと。でもインタビューではいろいろな分野の翻訳家を取り上げているし、特に限定していなかったし……と考えて応募してくださったのでした。Jさんは実力もあり、積極的なのですが、そういう方でもためらってしまうものなのですね。
そんなJさんのお話を伺っていくと……次回に続きます。
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