第148回 どうして監修をつけるの?
企画書を用意する際に、監修をつけることにあまり意識が向かない方が多いのは、もったいないことです。監修については第16回の「監修と類書」でもお伝えしていますが、あらためて詳しく見ていきましょう。実質的には「監訳」の場合でも「監修」と表記することもあります。今回の内容は監訳についても当てはまりますので、以下では監訳も「監修」に含めてお伝えしますね。
・質問ができる
翻訳をしていると、どうしてもわからないことがたくさん出てきます。そこでの調べものにはものすごく時間がかかりますし、そもそも何をどう調べればいいか見当がつかないこともあります。そんなときに、監修者の存在は心強いものです。玉石混淆の情報が氾濫するネットを徘徊することなく、何十年もの間系統立って蓄積された知識にアクセスできるのですから……!
・信頼性が高まる
編集者さんにとっては、新人に翻訳を任せるのは不安がありますが、監修者が目を通してくれるのであれば、クオリティを心配せずにすみます。読者にとっても同様に、監修者が著名な先生であれば、その実績を信頼して手に取ることができるでしょう(翻訳家にとっては、監修者が長年築いてきた信頼をお借りするようなものですから、そのことの意味をよくよく理解して、傷をつけることがないようにしなければいけません)。
・読者層が広がる
監修者の読者が手に取ってくれることも多く、監修をつけずに出版した場合に比べて、読者層が広がります。
・販売部数が見込める
読者層が広がることから販売部数も上乗せできます。また、監修者が大学で教えていて自分の講座でテキストに使用する場合など、まとまった部数が購入されることになりますので、編集者さんには安心材料になります。
・伝手ができる
そもそも先に監修者を見つけることができれば、出版社を一から探さなくても、監修者がすでにお付き合いのある出版社に紹介してくれることが期待できます。紹介であれば、企画書もきちんと検討していただけるでしょう。
このようなメリットから、企画書をつくる際には、ぜひ監修をつけることを考えてみてください。
「でも、監修をしてくれるような先生なんて知り合いにいないし……」と思うかもしれませんが、どんなきっかけでご縁ができるかはわかりません。たとえば、私の最初の翻訳書は、イベントの打ち上げで大学の先生をご紹介いただいたことがきっかけで、監修をしていただきました。出版社にもその先生が持ち込んでくださったので、企画も通りやすかったのです。
また、新刊の著書では林望先生に監修をしていただきましたが、ご縁ができたのはカルチャーセンターの講座でした。最前列で「おお~、これは面白い!」と前のめりに受講していたことがきっかけで、先生の主宰する句会に参加させていただくことになり、今回の監修にもつながったのです。
最近はオンラインでの講座やイベントも増えていますし、地方や海外在住の方にとっても、以前よりチャンスがあると思います。講師と直接お話はできなくても、チャットで質問を受け付けている講座もありますし、そこで印象に残るような質問をすれば、覚えていただける機会もあるでしょう。そのうえで連絡先を公開されている方であればコンタクトをとってみたり、非公開なら講座やイベントの事務局を通してお願いしたりできるでしょう。ぜひ試してみてくださいね。
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