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第143回 勉強のモチベーションを保つには?

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

今回は、こちらのご質問にお答えします。

「長年勉強を続けていると、どうしてもモチベーションが下がってきてしまいます。どうすればモチベーションを保つことができますか?」

勉強してきたことがなかなか報われないと、モチベーションが下がってしまうのは無理もないかもしれません。そんな場合にモチベーションを保つために、私自身やまわりの方々が実践している方法をいくつかご紹介します。

①芋づる式で勉強する
読書について、私は芋づる式で本を選ぶことをおすすめしています。ある本を読んだときに、その中で話題になったテーマや人物に関するものを次に読むようにするのです。そうすると、興味関心が高まっているので、難しい本でも読むハードルが下がります。たとえば、先日は『蛾売りおじさんのめくるめく蛾の世界』という本を読んだのですが、これも芋づる式で選んだものでした。第138回の青山南さんのインタビュー記事を書いた際、青山さんが手がけられた最新作『蛾 姿はかわる』を検索していて見つけたものです。青山さんのお仕事への関心が、この本にもつながっていったのです。同様に、勉強でも芋づる式を活用すると、勉強を続けることが苦にならなくなります。自分の興味関心を自然につなげていけるように、学び続けていくための工夫をしてみましょう。

②勉強のトリガーを見つける
勉強していく中で、何が自分のトリガーなのかを見つけていくことが大切です。私は基本的に「勉強は楽しいもの」だと思っているのですが、それは今まで知らなかったことを知って、自分が更新されていくからです。たとえば『蛾売りおじさんのめくるめく蛾の世界』には、ドイツでは蝶と蛾を区別しないことが書かれていました。日本では、「蝶は綺麗だけれども蛾は気持ち悪い」と思っている方が多いのではないでしょうか。私も、「蝶ならまだしも、蛾はちょっと……」と思っていました。けれども考えてみれば、ものすごく美しい蛾も存在しますし、両者の区別の基準すらよく知らないのです。それなのにどうして勝手な思い込みをしていたのか、自分の価値観を問い直すきっかけが得られました。こういう発見の喜びが、私の場合は勉強を続けていくためのトリガーになっています。自分にとってのトリガーを見つけて、それを上手に活用してみましょう。

③環境や時間帯を変える
生活パターンが固定すると、どうしてもマンネリ化してしまいます。家の中でいつも勉強しているなら外のカフェを活用してみる、あるいは部屋を変えてみる。それも難しいなら部屋の中の違う場所でやってみる、という具合に、些細なことで構いませんので、環境を変えてみましょう。また、朝に集中的に勉強するタイプなら、しばらく夕方や夜にやってみるなど、時間帯を変えてみると新鮮な気分で取り組めるかもしれません。

④細切れにする
60分間集中して勉強するよりも、15分×4回のセットで勉強するほうが効果が上がると言われます。集中できる時間は個人差があるので、一概には当てはまらないかもしれませんが、ダラダラと続けているだけで成長していないと感じるなら、勉強時間を細切れにして組み立て直すのもいいでしょう。

⑤義務にする
勉強した成果をnoteやブログなどを使って公開するようにします。毎週特定の日に公開すると決めて、まわりの方たちにお願いして見てもらうようにすると、「約束しているから頑張らなくては」という気持ちになれるのではないでしょうか。

⑥目標を捉え直す
「出版翻訳家デビューのための勉強」と捉えていると、すぐにデビューにつながらない場合、どうしてもモチベーションは下がりがちです。けれども「語学に触れて豊かな人生にする」「美しい日本語を操れるようになる」「多様な価値観に触れて深みのある人間になる」などを目標と捉えたら、近視眼的にならずに、もっと勉強を楽しめるかもしれません。それに、そういう余裕があるほうが、必死に勉強するよりも、夢が叶いやすいものです。

⑦自分にご褒美をあげる
ある著者の方は、「ここまで原稿を書いたら、好きな漫画の新刊を5ページ読んでいい」と決めているそうです。自分にささやかなご褒美をあげることで、モチベーションを保っているのですね。他にもコーヒーやお菓子など、ごほうびに活用できるものは多いでしょう。

以上の方法のうち、ご自分に合いそうなものを取り入れてみてくださいね。モチベーションを保つのに役立ってくれることを願っています。また、第121回の「夢をあきらめそうなときは?」の内容もご参考になるかと思いますので、あわせてお試しいただけたらうれしいです。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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