第129回 指揮者とまごう翻訳家
翻訳の仕事は、座っている時間が長いものです。長時間のデスクワークとなると、どうしても肩や腰に負担がかかります。そこで各自、身体のメンテナンスをすることになります。ランニングなどの運動をされている方もいますし、私もピラティスを続けています。効果は実感しているものの、ひどい肩こりは治りません……。
そもそも、座っている時間が長いことを構造的になんとかしなくてはと思うようになりました。以前から「座りすぎはよくない」とはよく耳にしていましたし、立って仕事をする方がいることも知っていましたし……。
とはいえ立って働くのって、すごく疲れそうでハードルが高かったのです。でも、「合わなければやめればいい」と思って、試しにやってみることにしました。既存のデスクの上に置くタイプの、高さ調節ができるデスクも市販されていますが、まずは段ボールで代用してみました(笑)。「意外といけそうかも?」と思ったところで段ボールの代わりにサイドテーブルを使ってみると、幸いこれがちょうどぴったりの高さだったので、本格的に「立ち仕事」をスタートさせました。
それから数週間このスタイルで続けているのですが、こんな変化がありました。
・夜に働けなくなった
以前は夜8時か9時ごろから「もうひと仕事」という具合だったのですが、一日中立ち仕事だと、疲れてしまって無理ですね……。でも、その分集中して終えようとしますし、夜寝る時間も早くなって健康的になりますので、プラスの変化と受け止めています。
・肩こりが少しラクになった
座っているときのように、いつの間にか姿勢が悪くなることがない分、肩こりがラクになりました。
・むくみが減った
一日中座っていると、太もものむくみがひどかったのですが、それがほぼなくなりました。
・姿勢がよくなった
よくなったというより、よくせざるを得なかったのですが……。肩こりがラクになって太もものむくみも減った代わりに、最初は足にすごく負担がかかっていたんです。立ち仕事だと、ちょっとした立ち方のくせが、如実に身体への負担として現れるのを実感しました。結局、ものすごく姿勢をよくして、その状態をキープしたほうが、足への負担がないんですね。それに気づいてからは、仕事をしているときの私の姿は、「……指揮者!?」とまごうばかり。燕尾服を着たら、すぐにオケの前で振れそうです。
・筋力がついた
これも、ついたというより、指揮者の姿勢をキープするために、つけざるを得なかったのですね……。それでもつらくなることが多いですが、座っていると、立ち上がってリセットするのが億劫なものです。それが、立っているとすぐに動いてリセットできるのです。
・座ったときに幸せを感じるようになった
座ったときに、「座るって、なんてラクなんだろう……!」と感動します。おかげで、一日の中で何度も幸せを感じられるという、思わぬおまけまでついてきました。
というわけで、ハードルが高いと思った「立ち仕事」ですが、思いのほか気に入って続いています。出版翻訳家は体力のいる仕事なので、志望者の方がそのための体力を養うのにもいいかもしれません。デスクワークがつらい方、よかったらお試しくださいね。
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