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第100回 出版社が倒産したら?③~復刊編~

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

出版社が倒産して翻訳書が絶版になってしまった場合、どうやって復刊すればいいのでしょうか。

基本的には、第20回の「7つの魔法⑦~出版社に持ち込む」から始めることになるでしょう。すでに出版された翻訳書という現物があるので、最初から企画書を作成する必要はないとはいえ、また出版社を探さなくてはなりません。

担当編集者さんが他の出版社に転職するのであれば、その転職先で検討していただくのがいちばんいいでしょう。編集者さん自身も、自分の手がけた作品として思い入れがあるでしょうし、人間関係もすでにできているのですから。

私の場合は、担当してくれたのが編集プロダクションの編集者さんでしたので、どこから復刊するかを一緒に相談しながら動くことができました。編集者さんのほうで伝手を当たって条件なども確認してくれたので、とてもありがたかったです。自分ひとりですべてやっていたとしたら、精神的にかなりつらかったでしょう。そう考えると、編集プロダクションを間に入れることも、出版社が倒産した場合のリスクをおさえることにつながるかもしれません。

大手出版社を含めいくつかオファーをいただいたものの、結局は、その編集プロダクションから復刊しました。これは、編集者さんにとっても私にとっても思い入れのある大切な本なので、大切に長く売っていきたいとの判断からです。編集プロダクションが出版社でもあったからできたことでもあります。復刊後、今年に入って電子書籍化もされ、支持を広げることができています。

このように出版翻訳した際の人脈を活かせない場合は、類書を刊行している出版社に持ち込むことになります。翻訳書の現物とともに、その本がどれだけ読まれてきたかを訴えましょう。販売部数などの数字だけでなく、読者のレビューや個人的にいただいた感想などもあるといいでしょう。また、具体的な読者層の情報や、メディアなどで取り上げられた実績があればまとめておきましょう。

復刊できたのは、本が長年版を重ねて、読者の方々から支持を得ていたことが大きかったと思っています。復刊のことまで考えると、原書を選ぶ段階で、寿命の長い本を選んでおくことも大事でしょう。文芸書の場合、絶版になった後に、その本のファンだった他社の編集者さんが手がけて復刊されることがあります。実用書ではこういうケースは少ないかもしれませんが、たとえば勉強法についての本だとしたら、流行りの勉強法を紹介しただけの本ではなく、学びの本質を突いた本を選ぶようにすれば、長く版を重ねていくことができるでしょう。

たとえ出版社が倒産して絶版になってしまっても、あきらめることはないのです。

※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。どうぞよろしくお願いいたします。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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