第91回 どうやって催促すればいいの?
今回は、いただいたこちらのご質問にお答えします。
「編集者さんに企画をお預けして、検討してくれるということだったのですが、その後ご連絡がないままです。どうやって催促すればいいのでしょうか?」
ただ、最初にすごく前向きなお返事があったのに、その後動きがないまま3か月くらい経ってしまった……という場合であれば、催促してみてもいいでしょう。その際、メールでご連絡することになりますが、どんな文面にすればいいのか、頭を抱えるところですよね。
そこでおすすめなのは、たとえばお預けしている原書の著者の新刊情報など、何か新しい情報を提供することです。そう頻繁に新刊が出るわけでもないでしょうから、何かその原書にまつわる話題があれば、それで構いません。「それもありません!」という場合は、ちょっとした時候の挨拶でもいいでしょう。要は、「ワンクッション置く」ということと、できれば単に相手に行動を要求するだけでなく、「こちらからも何かを与えることができれば望ましい」ということです。その「何か」が、企画を前に進めるのに役立つものであれば理想的ですね。
編集者さんもおそらくは覚えてくれているのでしょうが、日々の忙しさに紛れつつ、「申し訳ないな」と思いながらもそのままになっているケースが大半かと思います。そうであれば、催促のメールをもらうことで連絡をしやすくなるでしょう。
気をつけたいのは、「こんなに待っているのに、まだなんですか」と相手を責める調子にならないことです。ただでさえ、何かを催促されるのはうれしいものではないですよね。「やるべきことをやっていない」と指摘されるわけですから。申し訳ないという思いがあればなおさら、責められている気持ちになってしまいます。
そこで試していただきたいのが、「自分を主語にして伝える」ことです。心理学ではこれを「I(アイ)メッセージ」と言います。「まだなんですか」というのは、「あなたはどうしてまだ連絡をくれないんですか」と相手を主語にして伝えているので、「YOUメッセージ」と呼ばれます。YOUメッセージだと、どうしても批判的に受け取られてしまうことがあるのです。この状況であなたは、「忘れられているんじゃないかという心配」があるから、相手からの連絡がほしいわけですよね。だったら、「しばらくご連絡がなかったので、もしかして忘れられてしまったのかもと心配になって……」と「Iメッセージ」で自分の気持ちを伝えるようにしてみましょう。これなら、催促のメッセージも相手にとって受け取りやすくなります。
たまにですが、本当にうっかり忘れてしまっていた(!)というケースもあります(笑)
いずれにしても、催促の結果、よい形で企画が動き出すことを願っています。
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