第86回 企画をどうやって進めているの?②
企画の持ち込みについて、出版社さんにお問い合わせをしてみたところ、募集はしていないとのこと。だけど以下の条件でもよい場合には送ってもらって目を通しているそうなのです。その条件とは……
・返却不要のコピー等で、作品の概要がわかるものを郵送していただく。
・検討期間に3か月ほどいただく。
・採用させていただく場合のみ、こちらからご連絡を差しあげる。
というもので、あまりいい条件とは言えません。正直なところ、「うーむ」と考えてしまいました。でも、やりとりをさせていただいた際の丁寧な様子から、ちゃんと目を通してくださると期待できます。この出版社さんのことは、もともと他のロングセラー作品で知っていて、良書を刊行している老舗のイメージがありましたし。それに、この条件を提示されたら、「それなら、やめておこうかな」となる方が多いと思うのです。それでも送ってくる方は少ないでしょうから、その分、見ていただける可能性も高いはず。
そう考えてお送りすることにしたのですが、ひっかかったのが「返却不要のコピー等」という箇所です。この連載で、「コピーではなく現物を送るように」お伝えしていますし、断然そのほうがいいからです。
返却用の封筒を同封することも考えましたが、先方が「返却不要」と指定しているので、同封しても返却していただけないかもしれません。それなら原書を再度購入しようかとも思ったのですが、そこそこのお値段になってしまっているうえに、届くまでに日数もかかります。さらに、届いてから原書の上に訳文を切り貼りして……という手間暇を考えると、気持ちが萎えてしまいそうでした。
それならエネルギーのあるうちに送ろうと、今回は試訳を貼りつけた原書をコピーすることにしました。近所のコンビニに原書を持っていって、見開きでぱっぱとコピーしようと思ったら……できないんですね。絵本のサイズが見開きではおさまらず、結局2冊とも1ページずつ延々とコピーする羽目になりました。途中から後ろに並んだ方に露骨にため息をつかれ、「すいません! あと4枚です!」と声を張り上げつつ(苦笑)。フルカラーのコピー代も、ちょっとしたディナーに行けそうな金額に。
コピーだけでぐったりでしたが、まだまだ先があります。余白をカットして、見開きで読めるようにのりづけして……と、まるで小学生の工作のようなひととき。手先の不器用さを存分に発揮してしまい、完成した作品からはどことなく必死な雰囲気が漂います。少なくとも、「がんばってつくったんだな」というのはお伝えできるでしょう……。
ひとつ、思いがけない発見だったのは、コピーのほうが原書の文字が目立たないこと。まるで元から日本語の絵本のように読めるのです。「これはいい!」とうれしい驚きでした。
とはいえ、全部コピーをとって切り貼り製本するのと、訳文を原書に切り貼りするのと、どちらのほうが大変なのか……。どちらもかなり時間もかかりますし、不器用ならなおのことぐったりです。
ともかく、無事お送りすることができたので、後はお返事があるのを気長にお待ちします。果報は寝て待て、という感じでしょうか。
実は、「待つ」というのにもコツがあるのです。次回の連載では、待つ時の心構えについてお伝えしますね。
※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。どうぞよろしくお願いいたします。