第85回 企画をどうやって進めているの?①
今回は、検討していた原書について、実際にどうやって出版翻訳に向けて動いているかをお伝えします。
まず進めているのが「⑥思い出についての絵本」です。本書のイラストレーターの作品がすでに日本で出版されているので、持ち込み先を絞りやすかったからです。
企画書と原書に試訳をつけたものを用意して、最初に「ここがいいのでは」と思った出版社さんにお送りしたのですが、刊行作品を厳選しているとのことで、お断りのお返事をいただきました。
そこで、次の出版社さんに打診してみました。1社目は直接面識があったのですが、2社目のこちらは数年前からメールでやりとりさせていただいているものの、企画の持ち込みは初めてです。企画書をお送りしていいか、本の概要をお伝えしてお尋ねしたところ、出版点数を制限していることを理由に、こちらもお断りのお返事でした。
2社にお断りされて落ち込むかというと、まったくそんなことはなく、次に進んでいます。それは、私が「寺田さん、その鋼のメンタル、どこで売ってるの?」と訊かれてしまうメンタルの持ち主だからではなく(笑)、単に断られることに慣れたというか、断られることと企画や本の内容の良し悪しはあまり関係ないとわかっているからでしょう。1社目も2社目も、出版社さん側のご事情によるものですし。
動画でもお話させていただいたように、企画が通るかどうかは相性やタイミングによる部分が大きいので、確率の問題なんですね。もともとこの原書は、小説にたとえるなら、エンタメではなく純文学。出版してくれるところが楽に見つかるとは思っていません。むしろ、あっさり見つかったら、「日本の文化に一体どんな大異変が起きたの?」と驚いてしまうでしょう。
10社のうち1社が「ぜひうちで出したい!」と思ってくれるとして、まだ2社目。というわけで3社目に。この出版社さんも本書のイラストレーターの作品を出版しているのです。ところが、実際にその絵本を手に取ってみると、同じイラストレーターとはいえ、かなり絵のテイストが違います。それでも接点はあるわけですから、打診してみることにしました。
それに、この出版社さんの絵本を読んでいて、もうひとつの接点に気づきました。「⑤おばあちゃんと孫娘の絵本」と、構成が似ているのです。登場人物こそ違うものの、幼い女の子が大人に「どうして? どうして?」と、この世界の不思議を尋ねていくところは同じ。だけど最後の部分の方向性が違うので、本書にも関心を持っていただけるかもしれません。
「⑤おばあちゃんと孫娘の絵本」は、普遍的な内容なので、「いい絵本を出している出版社さんならどこでもいい」と思っています。1社目は面識があるところに送ってお断りのお返事をいただいていたので、今回が2社目になります。
2冊揃えて企画を持ち込もうと思ったものの、この出版社さんには伝手がありません。まわりにも伝手のありそうな方が思いつかなかったので、直接持ち込むことにしました。出版社さんのサイトでは、企画の持ち込みについて言及していませんでした。募集しているわけでもなく、かといって「持ち込みはお断りします」という文言もありません。そこでお問い合わせをすることにしました。まったく知らないところにアプローチするのは、やはりエネルギーが要るものです。自分はこれこれこういう者で、御社にご連絡差し上げているのはかくかくしかじか……というところからスタートしないといけないので、本当に「よっこらしょ」という感じです(笑)。重い腰を上げてお問い合わせをしてみたところ、お返事がありました。
その内容はというと……次回に続きます!
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