第76回 コピーでもいいの?
今回は、いただいたこちらのご質問にお答えします。
「絵本の企画を出版社に送付する際は、翻訳をつけた絵本のコピーを送ればいいのでしょうか?」
こういう場合は、コピーではなく現物を送るようにしましょう。なぜなら、伝わるものがまったく違うからです。
絵本の色合いは、しっかりと色校正をして再現されています。紙ももちろん、色の再現に適しているだけでなく、手触りや持ち重りなど、あらゆる要素を考慮して選ばれています。一つひとつ吟味されているからこそ伝わるものがあるのです。
それがコピーでは、色合いが変わってしまうばかりか、紙はペラペラ。伝えられる要素が何分の一、いえ、何百分の一にすらなってしまいかねません。せっかく素晴らしい絵本で、がんばって翻訳もしたのに、そんなことで魅力を損なってはもったいないですよね? 本来の魅力をお伝えできるよう、必ず現物を送ってください。
ただ、そうすると問題になるのが、「送った原書が返ってこない」場合です。もちろん、たいていの出版社さんはきちんと管理をしていますので、検討の結果手がけないとなれば返送してくださいます。ただ、中には、長年検討しているうちにそのままになってしまうケースも……。
そして原書を入手しようと思ったら絶版になっていて、何万円もする中古品しか市場になかったり、ソフトカバーしか売っていなかったり。日本では見かけませんが、単行本がしばらくして文庫化されるように、海外の絵本では紙質を落としたソフトカバーの廉価版が販売されることがあります。そうすると元々のハードカバーでの販売をしなくなってしまい、入手できなくなることもあるのです。
こういう事態を防ぐには、あらかじめ返送用の封筒などを一緒に送るのもひとつの手です。かといってそれでは、持ち込む段階から早くも断られるのを前提としているようで、気が進まないですよね……。
結局、「心配だったらあらかじめ原書を複数冊買っておく」というのがいちばんの解決策かと思います。
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