TRANSLATION

第64回 マイナスはプラス

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

今回は、こちらのご質問にお答えします。

「必ずしも対面で営業ができないときは、どうすればいいですか? 翻訳学校のトライアルに合格したのですが、海外在住のため、エージェントの担当者へのアピールの機会もなく、歯がゆい気持ちです」

この方の状況、「むしろ有利なのでは?」と思いました。「海外在住」の方はきっとなかなかいらっしゃらないでしょうし、それだけで覚えていただけますよね。「ロンドン在住の」とか「ニューヨーク在住の」という具合に、ある種、枕詞のようにして「売り」にできるのではないでしょうか。

担当者に対面でのご挨拶ができないなら、動画を収録してお送りすることもできます。名刺交換をしても時間が経つとすぐ忘れられてしまうものですが、動画ならむしろ印象に残るのではと思います。

ご連絡先はわかるわけですから、その方にメールで「〇〇さまにご挨拶させていただきたく、動画を収録いたしました。ご多忙とは存じますが、1分ほどですので、ご覧いただければ幸いです」とお送りしてみてください。動画の中では、お相手の方のお名前を複数回呼びかけて注意を惹いてくださいね。

また、「海外に住んでいるため、なかなか対面でのやりとりができない歯がゆさ」も、ぜひお伝えしてみてください。それはマイナスポイントなわけですが、マイナスがある人を何とかしてあげたいと思う気持ちを人は持っているものですし、ましてご本人がそのマイナスを補おうと積極的にがんばっておられるなら、なおさら応援したいと思うものです。

メールでやりとりをされる際にも、折に触れて「海外在住ならでは」の現地のおもしろい情報をちょこっと織り込んだりするのもいいかと思います。相手に話の小ネタを提供する感じで、リアクションの必要がない内容をほんの1、2行入れるくらいのものです。長い目で見ると関係づくりにつながるでしょう。

自分ではマイナスだと思っていることが、他人から見るとプラスになることは多いものです。同じような悩みを抱えている方がいらしたら、「自分のこのマイナスはどうやったらプラスに転じることができるだろう?」とぜひ考えてみてくださいね。

また、新型コロナウイルスの影響で、近頃はテレワークに移行される方も増えてきました。長期的にどうなるかはまだわかりませんが、テレワークのための態勢が整うことや新しい働き方に人々が慣れていくことで、今回のご質問にあったようなマイナスをマイナスと感じないですむようになっていくのかもしれません。

 

※この連載では、読者の方からのご質問やご相談にお答えしていきます。こちら(私の主宰する日本読書療法学会のお問い合わせ欄になります)からご連絡いただければ、個別にお答えしていくほか、個人情報を出さない形で連載の中でご紹介していきます。リクエストもあわせて受け付けています。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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