第40回 原書をどうやって探すのか③
「①シンクロニシティ選書術」「②同質の原理選書術」に引き続き、原書探しにも応用できる選書術をご紹介します。
③装幀選書術
「ジャケ買い」というように、本のカバーデザインやイラストに惹かれて選ぶこともあるでしょう。これはとても賢い選び方だと思います。なぜなら、装幀もひとつの「言語」だからです。その言語で本の内容を伝えてくれているので、装幀に惹かれたのなら内容にも惹かれる可能性が高いのです。
実際、装幀家の菊地信義さんは著書『新・装幀談義』の中でこう述べています。
「装幀とは、言葉で表出された作品の印象を、本の材質や文字の姿、色調や図像でとらえ、構築する。人の目や手に届ける批評でもある。作品に紙や文字の注文など書かれていないが、作品が読む者の内から、文字や色の印象をすくいあげてくれる。装幀者に必要なことは、構築する要素の豊かな知識と、それが人にもたらす意味や印象を深く理解することだ」
このことを強く感じたのは、『白い花と鳥たちの祈り』という小説を読んだときです。装幀の醸し出すたたずまいに惹かれたのがきっかけで読み、世界観にとても惹かれました。読後に再度装幀を眺めて、「この作品の世界観をこんなに的確に装幀で表現できるなんて!」と驚いたのです。なにも登場人物や作品中のモチーフを用いているわけではないのですが、作品世界と装幀がぴったり重なるのです。
原書選びにも、この装幀選書術を応用できるでしょう。私が『なにか、わたしにできることは?』の原書を手に取ったのも、その装幀を含めたたたずまいがきっかけでした。
感覚的なものを活かしやすい選書術なので、「今の日本のマーケットはこうで、ニーズはこうで」と頭で考えて選ぶよりも、自分にしっくりくるものを見つけやすいと思います。
その時点では「どうしてこの本が気になるんだろう」と理由がわからなくても、後になって「自分の人生とこういう点で重なるんだ」と気づくこともあるでしょう。だから気になる原書に出逢ったら、手に入れておくことをおすすめします。
「①シンクロニシティ選書術」「②同質の原理選書術」「③装幀選書術」、ぜひフル活用してあなたにぴったりの原書を見つけてくださいね。
そして、もうひとつおすすめなのが、「人に探してもらうこと」。「こういう原書を探している」と普段から人に話すなどして発信しておくのです。そうすると、「そういえば、この間出張でニューヨークに行ったときに立ち寄った書店で、こんな本があって……」というように、情報をもらえるようになります。ひとりで探すのが一本のアンテナを立てるようなものだとしたら、人に伝えることで何十本、何百本ものアンテナを立てることができるのです。
そのための近道は、自分が人のために何かをしてあげることだと思います。あなたから何かもらおうとするばかりの相手に、何かをあげる気にはなれないですよね? だけどいつも何かを与えてくれる相手なら、あなたも何かあげたいと思うことでしょう。結局、自分が人に対して何かを望むなら、自分から率先して望むことをするのがいちばんなのです。
※この連載では、読者の方からのご質問やご相談にお答えしていきます。こちら(私の主宰する日本読書療法学会のお問い合わせ欄になります)からご連絡いただければ、個別にお答えしていくほか、個人情報を出さない形で連載の中でご紹介していきます。リクエストもあわせて受け付けています。