第38回 原書をどうやって探すのか①
今回の連載では、いただいたご質問にお答えします。
「昔から疑問に思っているのが、翻訳しようと思えるほどのいい原書をどうやって探しているのかということです。編集者と翻訳者とで出逢い方は違うと思いますが……」
まずは復習をかねて第8回の「7つの魔法②~原書を見つける」を読んでみてくださいね。第37回の笹根由恵さんのインタビューでも、実際に書店に足を運ぶことの大切さが語られていました。五感をフル活用することで気づくことがあるでしょう。
実は、私は読書療法の活動をするなかで、「自分に合った本をどうやって探せばいいですか」とよく質問されます。これは翻訳しようと思えるほどのいい原書、つまり自分に合った原書をどうやって探せばいいかという今回のご質問にも通じるのではないでしょうか。
そこで、私がお伝えしている選書術のうち、原書探しにも応用できるものをご紹介します。
①シンクロニシティ選書術
本を選ぶとき、私がいちばん頼りにしているのがシンクロニシティです。シンクロニシティとは、意味のある偶然の一致のこと。「しばらく会っていない友人のことを思い出していたら、その友人から電話がかかってきた」という経験はないでしょうか。これがシンクロニシティです。
これには心理学的な根拠があります。私たちは日常生活の中で「意識」の世界ばかり重視していますが、「潜在意識」というものがあります。両者を合わせて100%とすると、意識の世界は5%から10%に過ぎないといわれます。それに対し、潜在意識は90%から95%と圧倒的に大きいのです。この潜在意識は、私たちが求めているものを探し出してくれる高度な検索エンジンのようなもので、シンクロニシティという形で必要な情報を差し出してくれるのです。意識に頼ってあくせく探すよりも、圧倒的に大きな潜在意識を活用したほうがよいと思いませんか。
シンクロニシティは、求めているものにアンテナを立てると発生しやすくなります。以前、「ブックガイド的な本が読みたい」と思っていたときに電車に乗ったら、目の前に座っていた女性が読んでいた本のタイトルがなんと、『心と響き合う読書案内』! まさにうってつけの本でした。こういう現象が起こりやすくなるのです。
原書探しでも、「こんな本に出逢いたい」とアンテナを立てることです。「ワクワクする新しい料理法を紹介した本を見つけたい」「巧妙なプロットに唸ってしまうミステリー小説に出逢いたい」という具合に。「まだそこまで自分の求めるものが具体化できていない」という方は、「絶対に自分が訳したい! と心が強く動く本に出逢いたい」でもかまいません。まずは、自分の思いを放つことから始めてみましょう。
続いての選書術は……次回の連載で!
※この連載では、読者の方からのご質問やご相談にお答えしていきます。こちら(私の主宰する日本読書療法学会のお問い合わせ欄になります)からご連絡いただければ、個別にお答えしていくほか、個人情報を出さない形で連載の中でご紹介していきます。リクエストもあわせて受け付けています。