第17回 7つの魔法⑤~プロフィールをつくる
企画書の中で、ひとつ残っている項目がありました。それが⑦訳者プロフィールです。ここでいよいよ7つの魔法⑤「プロフィールをつくる」の出番です。
まず考えてほしいのは、何のためにプロフィールをつくるのかということです。それは、編集者さんが見たときに「この人に翻訳をお願いしたい」と思ってもらうためです。あなたが翻訳を担当するのにふさわしい人物なのだと、ここでアピールしてください。
「実績が豊富な人のほうがどうしたって有利なのでは……自分にはとても無理」と思ってしまうかもしれません。だけど翻訳家としての実績があればそれで十分かといえば、そうとは限らないのです。
たとえば、あなたが選んだ原書が料理の本だとします。ここで二人の翻訳家が候補に挙がりました。一人は、これまで経済関連の書籍を多数手がけてきたベテラン翻訳家の60代男性。「男子厨房に近寄らず」という方針で育ったので、自分では一切料理をしたことがなく、カップラーメンすら作れません。もう一人は、翻訳実績はないけれど語学は結構できる30代女性。料理研究家として豊富な知識と経験があります。専門家なので、原書を読めばそれがどんな料理か、どんな調理方法か詳しく理解できます。さて、あなただったら、どちらに翻訳を頼みたいですか?
やはり、後者に頼みたいと思うのではないでしょうか。そのほうが内容に深く踏み込んで、しっかり理解したうえで翻訳してくれると期待できるでしょう。もちろん前者もプロですから、仕事として受ければきちんと勉強して対応するはずです。だけど後者はすでに必要な料理の勉強ができているのです。長年の経験から生まれる言葉や表現のほうが、付け焼刃の勉強よりも説得力がありますし、読者にも届くでしょう。
ですから、たとえ翻訳実績が十分ではなくても、その不足を補って余りある専門分野の知識や経験があれば、それをアピールすることで翻訳家として選ばれるチャンスがあるのです。どうすればあなたに翻訳を頼むのがふさわしいと思ってもらえるか、その観点からプロフィールをつくってみましょう。