第14回 書籍概要と対象読者
企画書に記載する項目を、引き続き見ていきましょう。次は、③書籍概要です。
あなたが選んだ原書がどんな本なのかをここで伝えてください。目次や翻訳サンプルなどの詳細情報は別途お渡しするように用意しますので、ここでは概要を説明してください。
注意してほしいのは、この項目は単なる内容のまとめではなく、本の魅力をアピールする箇所だということ。文芸書であれば「○○文学賞を受賞している」とか、ビジネス書であれば「この分野でアメリカのアマゾンで1位になった」など、「本国でこんなに有名な本で、多くの読者がいますよ。日本でも多くの方に読んでもらえますよ」と伝えてほしいのです。
自分がなぜその原書に惚れ込んだのかを伝えることももちろん大切ですが、それだけではなく、客観的にその価値を伝えられるようにしておきましょう。たとえば、流行の調理法についての本だとしたら、その調理法が取り上げられた雑誌記事やニュースなどの資料も用意しておきましょう。編集者さんに企画書を見せて説明する際に紹介できるよう、別にまとめておくのです。
原書の本国のメディア掲載情報もいいのですが、日本のメディアに取り上げられた資料のほうがインパクトがあります。「日本でもこんなに話題になっています」と伝えましょう。また、このようなメディア掲載があれば、「○○誌に掲載」「○○ニュースで取り上げられる」と書籍概要の中にも記載しておきましょう。
続いて④対象読者です。どういう方がその本を読んでくれるのか、考えてみてください。特定のニッチな層に向けた本なのでしょうか、それとももっと広く一般に読まれることを想定しているのでしょうか。読者の性別や年代などの属性を記載しましょう。
読者が高校生の場合と、年配の方の場合とでは、使う言葉も変わってきます。具体的な読者像が見えてくると、翻訳もしやすくなります。「こういう方が読んでくれる」と思うと、「その方に伝わりやすい言葉は何だろう?」と、翻訳をするうえでも判断基準ができてきます。
また、気をつけなければいけないことも見えてきます。私の場合であれば、認知症ケアの本の読者は実際に介護をしている方が大半です。大変な思いをしながらがんばっているのに、「そのやり方は間違っている。それでは状態が悪化する」とダメ出しをしたり、脅したりする言葉を使えば、読者の気持ちを傷つけてしまいます。逆に、読者をあおって行動の変化をうながすような自己啓発書なら、危機感を持たせる言葉をあえて使うことになるでしょう。
実際にあなたの身の回りにいる方を思い浮かべながら、読者像を具体化していきましょう。