第11回 原著者にコンタクトをとる
版権を押さえるためのもうひとつの方法が、原著者にコンタクトをとることです。
原書に著者の連絡先情報が記載されている場合もあります。たとえそこに情報がなくても、いまの時代であれば、著者のサイトやSNSを通じて連絡がとれるでしょう。それらを活用して、「あなたの本を翻訳したい」と著者に伝えておくのです。
『ハリー・ポッター』シリーズの翻訳を手がけた松岡佑子さんも、ご自身で著者に翻訳を申し出たといいます。作品に惚れ込んで熱意を伝えたことが、著者の心を動かしたのでしょう。
私の友人も、やはり著者にコンタクトをとりました。個人的な信頼関係ができたうえで、日本で出版できるところを探し始めたのです。
これは著者の立場になって考えてみるとわかりやすいと思います。著者にとって、自分の著作はとても大切な、自分の分身に等しい存在です。だからそれが外国で出版翻訳されるとなったとき、「誰がそれを一番大事にしてくれるだろう?」と考えるのです。
上手にプロモーションをしてたくさん売ってくれる、ということももちろん魅力ではあります。だけど創作に関わる人間であれば、その創作物の価値を損なうことなく、きちんと伝えてくれることをやはり大切にします。相手がそれを任せるに値するのかという、信頼の問題になるのです。
相手が大手出版社であれば、それはもちろん判断材料のひとつになるでしょう。だけどそれよりも、しっかりと翻訳してくれるのか、つまり「誰が翻訳するのか」が気になるところでしょう。そこで翻訳家が自分にコンタクトをしてきて、作品に思い入れを持ってくれていて、ぜひ自分がやりたいと言ってくれている、となれば心が動くものです。
著者の強い意向があれば、たとえ日本の出版社が他の翻訳家を検討していたとしても、やはり著者の意向が尊重されます。
ですから先々のことを考えて、原著者にあらかじめコンタクトをとることもひとつの方法です。
こうして版権を押さえたら、いよいよ日本で出版してくれるところを探していきましょう。そのためには、手がけたい原書がどんな本なのかを伝える企画書が必要です。それはどうやって用意すればいいのでしょう? 次回の連載でお伝えします!