第8回 7つの魔法②~原書を見つける
翻訳したい分野を絞ったら、次の魔法を使いましょう。それは、「原書を見つける」ことです。
自分が翻訳する原書を見つけることで、これから必要な勉強が具体的になります。原書が見つからないうちは、何をしなければいけないのか漠然としていて、将来が見えにくいでしょう。だけどやるべきことがはっきりすると、出版翻訳家への道筋も見えてきます。
では、その原書をどうやって見つければいいのでしょう? まずは、書店で探す方法があります。大規模書店の洋書コーナーに行って、そこで実物を手に取って興味を惹かれる本を探すのです。また、海外に行く際に、現地の書店で探してみるのもいいでしょう。
だけど海外にも行かないし、近くに大規模書店もない、という方もいるでしょう。その場合でも、オンライン書店で探すことができます。実際に、私もそうやって原書を見つけました。『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』の原書は、私が専門にしているパーソンセンタードケアという認知症ケアの考え方について関連書籍を検索する中で、オンライン書店で見つけることができたのです。
たとえばAmazonで書籍を検索すると、関連書籍やおすすめが出てきますよね。それを見ていく中で、興味を惹かれる本があるかもしれません。また、洋書の場合は、画像で赤く囲んであるように冒頭に出版社が関連書籍を載せていることが多いので、それを参考に探すのもいいでしょう。
専門書であれば、その分野で有名な大学や研究機関のサイトを見つけて、そこから刊行されている書籍や論文集を探す方法もあります。小説であれば、好きな作家の公式サイトやファンサイトで最新作をチェックすることもできるでしょう。
リアル書店、オンライン書店以外にも、国際的なブックフェアで見つけるという方法があります。このようなブックフェアでは、各国の出版社が自社のおすすめの本を揃えて出展しています。足を運ぶことで、これらの本を手に取ることができます。
大規模書店でも、洋書はやはり数が限られてしまいます。また、オンライン書店では、本の中身をすべて確認できないという制約があります。だけどブックフェアなら、多数の本を実際に手に取って確認できるのです。
私も、ブックフェアで原書を見つけたことがあります。それが『なにか、わたしにできることは?』という絵本の原書です。スペインの出版社が出展していて、そこで見つけたこの絵本のカバーイラストのたたずまいに魅了されたのです。
自分が何かをやりたいと思ったとき、理路整然とその理由を説明できる場合もあるでしょう。だけど人間は直観で動くことも多い生きものです。「なぜかわからないけれどこれをやりたい」と心が動くときは、その対象が発している雰囲気やたたずまいが重要な要素になると思います。言語ではないことばで語りかけられているのを、あなたが感じとっているということですから。その語りかけを実際に体験できる場として、ブックフェアに足を運ぶこともおすすめします。